満額回答続きの春闘の裏で…医療機関では「ベアゼロ」回答が相次ぎ、各地でストライキに突入。中小下請けの下層では労務費転嫁が道半ば

労働組合の中央組織「連合」は3月14日、2025年春闘の第1回集計結果を発表した。基本給を底上げするベースアップ(ベア)と定期昇給を合わせた平均賃上げ率は5.46%。前年の第1回集計から0.18ポイント上がり、2年連続の5%超えとなった。
「新たなステージの定着に向けて、良いスタートが切れた」。連合の芳野友子会長はそう評価したうえで、「賃金も物価も上がらないというこれまでの当たり前のノルム(社会通念)を変えるべきだと考え、2025年の春闘に臨んできた。これからが本当の正念場だと考えている」と力を込めた。
実際、自動車や電機、重工など主要産業の大手各社では、労組の要求に対して満額やそれに近い高水準の回答が相次いだ。自動車ではトヨタ自動車やマツダが、電機では日立製作所やNEC、富士通が満額回答だった。重工では三菱重工業、川崎重工業、IHIがそろい踏みで満額回答となった。さらにスズキや三菱ケミカルは労組側の要求を上回る回答となった。
物価高に苦しむ家計への配慮も
トランプ関税など経営環境の先行きに不透明感が強まる中、大手各社が高水準の回答に踏み切った背景には、人手不足の深刻化に加え、止まらない物価高に苦しむ家計への配慮も見られる。物価を反映した実質賃金は2024年まで3年連続でマイナスとなっており、今年はプラス基調に転じることができるのかは、まだ予断を許せない状況にあるためだ。
これから賃上げ交渉が本格化するのが中小企業だ。
連合の第1回集計では組合員数300人未満の中小組合の平均賃上げ率は5.09%となり、1992年以来33年ぶりの高水準となった。今春闘で連合は、大手と中小の格差是正を図るため、中小の賃上げ目標を全体より1%上乗せした6%以上としてきたことが奏功した格好だ。
ただ、芳野会長は「33年ぶりの高水準とはいえ、まだ大手と中小の格差は縮まっていない。中小は4~5月まで交渉が続くので最後までサポートしたい」と述べるなど、格差是正は道半ばとの認識を示した。
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