「綸言汗の如し(りんげんあせのごとし)」という中国の格言があります。「天子の言葉というものは、出た汗が体内に戻らないように一度口から出れば訂正することも、取り消すこともできない」という意味で、リーダーの発言の重さを戒めています。
しかしこの言葉は、一般の人たちにも通じる教えを含んでいます。
たとえ一時的な感情で発した言葉であっても、それは撤回できません。自分の言葉には責任を持たなければならないのです。
怒りの感情を鎮める呪文
怒りの感情がこみ上げることを「頭にきた」「頭に血がのぼった」といいますが、それは生理学的な事実です。怒りを感じると、自律神経系の交感神経が優位にはたらき、戦うか・逃げるかするために準備をします。
こうして血液が脳や筋肉といった重要な部分に送られ、血圧や心拍数が上昇します。頭が熱く感じたり、顔が赤くなるのはそのためです。
禅では「怒りは頭まで上げるな、怒りの感情は腹におさめておけ」と教えます。カチンときても、怒りの感情を腹におさめておけば、自然に消えてなくなります。
私が尊敬する曹洞宗大本山總持寺の貫首でもあった板橋興宗禅師は、腹におさめておく方法として、このようにご教示してくださりました。
「すぐに反応してはいけないよ。カチンときたら、ひと呼吸おく。そして呪文をとなえる。私の場合は、“ありがとさん、ありがとさん、ありがとさん”と3回、心のなかでとなえる」
呪文は何でもかまいません。「待てよ、待てよ、待てよ」「怒らない、怒らない、怒らない」「穏やかに、穏やかに、穏やかに」──。あなたのお気に入りを見つけてください。
呼吸で気持ちをスーッと落ち着かせ、自分なりの呪文をとなえれば、怒りの感情は吹き飛んでしまいます。
誰もがストレスをため、怒りのタネもそこらじゅうに落ちている時代です。怒りっぽい人でなくても、怒りの感情を鎮める呪文を持つことをおすすめします。
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