「抗がん剤治療はしない」「標準治療は受けない」 56歳で亡くなった倉田真由美さんの夫が決断した"膵臓がん"との向き合い方
夫だって、亡くなる前日までお風呂に入って髪を洗ったり、髭を剃ったりしていました。自分で歩いてトイレにも行っていました。私は、寝たきりの人の看病をする覚悟でいたのに、まったくそういうことなく亡くなりました。
――すごく自然な感じですね。
そういう意味では、「いい亡くなり方だった」っていえると思うんですよね。私は、もっともっと(看病で)苦労させられてもよかったんだけど、たいしたことをさせてくれないままでした。
がんになったら、「家族に迷惑かけたくない」って思う人もいるし、「痛いのが嫌だな」って思う人もいる。そういうさまざまな考え方の1つに「標準治療を受けない」っていう考え方があってもいい。
だからあくまでも例としてですが、夫の場合はこうだったと人に知ってもらうことは、すごく意味があるんじゃないかなと思っています。
膵臓がんの闘病日記を読んだ
実際、私も夫の膵臓がんがわかってから、病気のことをすごく調べました。そのなかの1つで何度も目を通したのが、山本文緒さんの『無人島のふたり』です。
彼女は2021年に膵臓がんで亡くなりましたけど、この本は彼女の闘病の日記であり、とても参考になったんですよね。夫は必ずしも山本さんと同じ経緯をたどったわけではないけれども、ここは同じだなとか思うこともいくつもあって。
――同じ病にかかった人の体験を知ることで、楽になる部分もあったということですか。
少なくとも私はそうでしたね。夫はそういうのを気にしませんでしたが、私は夫を看病するうえでたくさんの例を見たかったし、標準治療をしない人ってどうなるのかということも知りたかった。
でも、先ほども言ったように、実際は恐れたほどすごく苦しむということはなかった。膵臓がんは痛いって聞いていたので、本当に怖かったんですけれど。

――最初は黄疸という症状があって。でも、どんな病気かわからなかったんですよね。
最初の病院で胃炎といわれたのですが、それはぜったいおかしいと。素人目にも見てわかるぐらい全身が黄色くて。
2件目で黄疸だって言われたけれど、原因はわからなかった。CTを撮ったんですが、わからなかったんです。
ただ、夫からは最初に「膵臓がんという可能性もある」って聞いたときに、根拠はなかったですが、何となくそんな気がしていました。悪い意味で当たってしまいました。
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