お金は「すぐもらえる」ほど「価値が高くなる」訳 将来を見据えて行動するための考え方を学ぼう

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割引現在価値は、キャッシュフローの「値段」と考えるとわかりやすいでしょう。得られるまでに時間がかかるキャッシュフローほど、すぐに使えなくて不便なので、値段が安くなるということです。

NPV法マスターへの道③

ハードルレート(採算割れライン)を意識する

キャッシュフローの「値段」つまり割引現在価値は、どうやって決まるのでしょうか? 

割引現在価値というと難しそうな名前ですが、計算自体は難しくありません。スーパーでは賞味期限が切れかけている食材に割引シールが貼られますが、それと同じように、キャッシュフローをもとの金額から割り引いて考えるというだけの話です。

では、割引率はどうやって決めるのでしょうか? スーパーでは、どの品物にどの割引シール(10%、30%、50%……)を貼るかはお店の方針で決まっているのでしょう。同様に、キャッシュフローの割引率をどうするかも会社によって変わります。

1つの考え方としては、既に説明したような銀行の預金金利を使う方法があります。しかし、企業のトップは銀行預金と同じ利益しか生み出せない部署や投資プロジェクトに価値を感じないでしょう。

なぜなら、その部署を解体して浮いた資金を銀行に預けるだけで、同じ金利分の利益を確保できるからです。加えて、解体した部署のリソースを新しいビジネスに活用し、より高い収益を目指すという戦略も考えられます。

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こうした理由から、NPV法でキャッシュフローを割り引く際の割引率は、銀行預金の金利よりも高く設定されるのが一般的です。その投資が最低限達成すべき収益率を「ハードルレート」と呼び、それを基準にします。

「ハードルレート(hurdle rate)」の語源は、英語の「hurdle(障害・ハードル)」に由来しており、投資プロジェクトが「乗り越えるべき最低基準」を指しています。

ハードルレートは、少なくとも採算が取れるレベルでなければなりません。その理由は、企業が新しいプロジェクトに投資するときには、資金をどこかから調達しなければならないからです。

例えば、株式を発行して資金を集めたり、銀行から融資を受けたりするでしょう。

しかし、これには代償が伴います。株主には配当を、銀行などの債権者には利息を支払わなければなりません。こうした資金を提供してもらうために企業が負担するコストを「資本コスト」と呼びますが、ハードルレートはこの資本コストを上回る必要があります。もしそれができなければ、プロジェクトは採算割れを起こしてしまうのです。

バランスシート
ビジネスと資金調達の関係(出典:『投資と金融がわかりたい人のためのファイナンス理論入門』冨島佑允、CCCメディアハウス、2018)
 
冨島 佑允 クオンツ、データサイエンティスト

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とみしま・ゆうすけ / Yusuke Tomishima

クオンツ、データサイエンティスト。1982年、福岡県生まれ。京都大学理学部卒業、東京大学大学院理学系研究科修了(素粒子物理学専攻)。大学院時代は欧州原子核研究機構(CERN)で世界最大の素粒子実験プロジェクトに参加。修了後はメガバンクにクオンツ(金融に関する数理分析の専門職)として勤務し、ニューヨークのヘッジファンドを経て、2016年より保険会社の運用部門に勤務。2023年より多摩大学大学院客員教授。著書に『数学独習法』(講談社現代新書)、『世界を変えたすごい数式』(朝日新聞出版)などがある。

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