"現役世代の稼ぎ"を守る「収入保障保険」って何? 「ヒューマン・キャピタル」から考える人生設計

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「60歳までの毎月30万円の支払い」を保障する契約の場合、被保険者が50歳で亡くなれば、その後の10年間、毎月30万円が振り込まれます(30万円×12カ月×10年=計3600万円)。59歳で亡くなれば1年分の支払いしか受け取れません(30万円×12カ月×1年=360万円)。この点が終身保険とは大きく異なります。

終身保険では、例えば保障額が3000万円の場合、30歳で亡くなっても100歳で亡くなっても、3000万円の保険金が支払われます。

一方、収入保障保険では、亡くなる年齢が遅くなるほど受け取る総額が少なくなります。さらに、支払い期間が終了した後に亡くなった場合は、保険金は支払われません。

仮に61歳で亡くなったとすると、収入保障保険では1円も受け取れない可能性があります(これはわかりやすく説明するための例であり、実際の金額や条件は契約内容によって異なります)。

収入保障保険は終身保険より安い

年齢が上がるにつれて保障額が減っていくことに不安を感じるかもしれませんが、このしくみのおかげで、一般的に収入保障保険は終身保険に比べてかなり安い保険料で提供されます。保険会社の視点では、保障額が年々減少するため、より低い保険料で提供できるのです。

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そもそも生命保険は、家族の稼ぎ手が亡くなったときに、その後の生活費を補うためのものです。そして、年齢が上がるにつれて、残りの人生で必要となる生活資金の総額は自然に減っていくはずです。

たとえ健康な人でも、余命は毎年減っていきます。これに伴い、今後必要となる生活費の総額も年齢とともに減少していくのです。

このように、ヒューマン・キャピタルの考え方を取り入れた収入保障保険は、保険加入者にとってはコスパのよい合理的な選択肢の1つとなっています。

生命保険会社の販売員にとっては、保険料の高い終身保険を契約してもらうほうが自分の成績につながるため、収入保障保険がラインナップにあっても、積極的に提案してこないことがあるかもしれません。しかし、自分の一生に関わる重要な選択なので、保険会社に一度相談してみる価値はあるでしょう。

冨島 佑允 クオンツ、データサイエンティスト

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とみしま・ゆうすけ / Yusuke Tomishima

クオンツ、データサイエンティスト。1982年、福岡県生まれ。京都大学理学部卒業、東京大学大学院理学系研究科修了(素粒子物理学専攻)。大学院時代は欧州原子核研究機構(CERN)で世界最大の素粒子実験プロジェクトに参加。修了後はメガバンクにクオンツ(金融に関する数理分析の専門職)として勤務し、ニューヨークのヘッジファンドを経て、2016年より保険会社の運用部門に勤務。2023年より多摩大学大学院客員教授。著書に『数学独習法』(講談社現代新書)、『世界を変えたすごい数式』(朝日新聞出版)などがある。

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