NHK「あさが来た」、女性企業家の功績とは? 銀行、保険、炭鉱、紡績など多分野で足跡残す
浅子が設立に関わった企業は、その後、どうなったのだろうか。
加島銀行は、1929年に破綻し、その店舗は、鴻池銀行に7支店3出張所、山口銀行に4支店1出張所、野村銀行に14支店14出張所を継承した。鴻池銀行と山口銀行は1933(昭和8)年に34銀行と合併し、三和銀行となる(現在の三菱東京UFJ)。また野村銀行は1948(昭和23)年に大和銀行となり、現在はりそな銀行となっている。
ところで幕末・維新期以降の近代日本の経済と経営の発展は、こうしたTVドラマの主人公を含めた多くの企業家と彼らのパートナーたちのたゆまざるイノベーション(技術や経営の革新)が推進力となって達成されてきた。そうしたイノベーションの歴史を研究する学問として、経営史(Business History)・企業家史(Entrepreneurial History)という分野があり、その研究成果は大学や大学院の経営史・企業家史・イノベーション論などの授業で講じられている。
「輝いていた女性」の歴史を学ぶことの重要性
TVドラマは原作の作家や脚本家の描いたストーリーで展開される。経営史や企業家史という研究分野は、その原作や脚本の基礎となる歴史的事実に関する情報を提供する役割も担っているといえるだろう。
他方、原作者や脚本家が、新しい歴史的事実の発見によって、新たな知見を加えることもある。さらにTVドラマによって、視聴者が企業家や関わった企業やその関連のことに、興味を募らせることも多いであろう。一歩進んで経営史・企業家史の研究に関心をもつことも多いであろう。その意味では、TVドラマと経営史・企業家史は、相互啓発的な関係にもあるといよう。ただし知るきっかけとしては、こうしたTVドラマの役割が大きい。視聴者は、実在のそれらに「翻訳」しながら視聴することで、その時代の社会や経済そして日々の生活の状況も含めて、ビビッドに日本の歴史を学び、そして楽しむことができるだろう。
とくに今回のモデルとなった広岡浅子のように、女性企業家の経営史・企業者史というのは、まだ研究蓄積の少ない分野である。今回の連続TV小説によって、そうした分野の研究を志す方が増えてくれることを期待したい。「女性が輝く社会」を実現するためにも、「輝いていた女性」の歴史を学ぶことも重要であろう。
最後に広岡浅子をより深く知るための入手しやすい文献を紹介すると、原作の古川智映子『小説 土佐堀川-女性実業家・広岡浅子の生涯』(1988年、潮出版社)をはじめ、『広岡浅子徹底ガイド-おてんば娘の「九転び十起き」の生涯」』(2015年、主婦と生活社)、広岡浅子『超訳 広岡浅子自伝』(2015年、KADOKAWA)などがある。
【参考文献】
〇古川智映子『小説 土佐堀川-女性実業家・広岡浅子の生涯』(1988年,潮出版社)
〇『広岡浅子徹底ガイド-おてんば娘の「九転び十起き」の生涯」』(2015年,主婦と生活社)
〇広岡浅子『超訳 広岡浅子自伝』(2015年,KADOKAWA)
〇『大日本紡績株式会社50年紀要』(1941年,大日本紡績株式会社)
〇『大和銀行40年史』(1958年,大和銀行)
〇『大和銀行70年史』(1968年,大和銀行)
〇『三和銀行史』(1964年,三和銀行)
〇『大同生命70年史』(1973年,大同生命保険)
〇『日本女子大学校の過去現在及び将来』(出版年不詳,日本女子大学)
〇『日本女子大学学園事典-創立100年の軌跡』(2001年,日本女子大学)
〇『史料が語る三井のあゆみ』(2015年,三井文庫)
〇佐々木聡『科学的管理法の日本的展開』(1998年,有斐閣)
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