給付金を受けられず困窮した、自称"物売りの人" 「平等と公正は違う」超氷河期を経験した男性

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利用に応じて水道料金を負担するのは当然だ。一方で2022年度というと、まだコロナ禍の影響で食費にも事欠く人たちが少なくなかったタイミングでもある。そうした中、容赦なくライフラインを止めるような政策は公正といえるのか。ユウタさんは水道が止まるたび、アルバイト先の水道水を飲んでしのいだという。

ネットで散見される「マイノリティの特別扱い」

平等と公正について。私が何年か前にその違いを表すイラストを見たとき、目から鱗が落ちる思いがした。

腕時計
私物として使っているという腕時計。「クリントン元大統領が就任式で着用していたものと同じで……」などと熱く語る口調から「メイド・イン・アメリカ」へのこだわりが伝わってくる(編集部撮影)

就職氷河期世代、しかも女性である私の足元にはいくつの木箱があるのだろう。一方でもっと長い目でみれば、木箱は決してゼロではないとも思った。前の世代の人たちが公正な社会の実現のために努力を続けてくれたおかげだ。

しかし、最近はSNS上を中心に、公正であろうとすることへの風当たりがかつてなく強まっているとも感じる。彼らはよく「マイノリティの特別扱い」「マジョリティへの逆差別」「行き過ぎた多様性」といった言葉を口にする。インボイス制度に反対する事業者への批判もこうした空気を反映しているようにみえる。

全員が野球を見られる社会をすぐに実現することは難しい。しかし、今まで続けてきた木箱を分け合う努力をなぜ今止めるのか。その理由が、私にはわからない。

ユウタさんは自身のことを「物売りの人」と呼ぶ。「コロナ禍でミュージシャンや俳優などの苦境はマスコミでもよく取り上げられましたが、僕らのような物売りはほとんど注目されませんでした」と振り返る。

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今も売り上げはコロナ禍前の半分ほど。インボイス制度は負担軽減措置が取られているが、いずれその影響は本格化するだろう。ポストコロナといわれる現在も「ダメージから脱することができずにいる人たちがいることを忘れないでほしい」とユウタさんは願う。

本連載「ボクらは『貧困強制社会』を生きている」では生活苦でお悩みの男性の方からの情報・相談をお待ちしております(詳細は個別に取材させていただきます)。こちらのフォームにご記入ください。
藤田 和恵 ジャーナリスト

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ふじた かずえ / Kazue Fujita

1970年、東京生まれ。北海道新聞社会部記者を経て2006年よりフリーに。事件、労働、福祉問題を中心に取材活動を行う。著書に『民営化という名の労働破壊』(大月書店)、『ルポ 労働格差とポピュリズム 大阪で起きていること』(岩波ブックレット)ほか。

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