寒い冬こそ食べ頃「めすうなぎ」の知られざる魅力 うなぎの一大産地「三河一色」から生まれた
さらに、2024年1月末から2月半ばにかけて、西尾市一色町にある「うなぎの兼光」と「うなぎ割烹 みかわ三水亭」、「うなぎ処 いっしき」にてめすうなぎをテスト販売し、感想をヒアリングしたところ、「やわらかさ、脂ののり、味、すべてにおいていつもよりおいしかった」「脂も身もうなぎの甘みがあり、しっかり脂がのっていたがさらりとしていた」「フワフワでうなぎではないみたいな食感でした」など評判も上々だった。
オスと比べてうま味成分が1.5倍
実際、オスとメスの脂肪組織比率を測定したところ、オスが34.6%でメスは46.3%と多く、筋肉内にきめ細かくサシ(脂肪)が入っていることがわかった。牛肉に例えると、赤身と霜降り肉の違いのようなものであり、食べた感想にやわらかさや脂ののりが多く挙げられているのも納得できる。
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味香り戦略研究所が同じ養殖場で同一の飼料を与えて飼育したオスのうなぎとめすうなぎの成分を分析したところ、100gあたりのアスパラギン酸は2mgと同じ数値だったが、グルタミン酸が6mgのオスに対して、めすうなぎは1.5倍の9mgでうま味成分が多いことがわかった。ほかにうま味の余韻が強く、苦みや雑味も少ないというデータもある。
また、夏に出荷されるオスの新仔うなぎの体表は青みがかっていて、皮や身がやわらかく、脂ののりが良い「青うなぎ」として古くから最高級品とされてきた。成長して秋冬になると黒くなるが、めすうなぎは冬に出荷する場合でも新仔うなぎのオスと同等の青みがかっている。
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めすうなぎを養殖する技術は、従来の飼料に大豆イソフラボンを混ぜて、特定の期間に与えること。つまり、飼料を置き換えるだけなので生産者に負担がかからないのも特徴である。
「出荷時のめすうなぎに大豆イソフラボンが残留していないことを確認していますし、仮に残留していたとしても大豆イソフラボンはサプリメント等にも用いられていますから、食品としての安全性に問題はありません。当研究会ではこの技術から生まれためすうなぎを『艶鰻(えんまん)』と名付け、西尾市一色町の新たなブランドうなぎとして、育てていきたいと考えています」(大石さん)
めすうなぎは良いことづくめであるが、口の中でほとばしるジューシーな脂や野趣あふれる味わいのオスのうなぎのおいしさも捨てがたい。スタミナが失われがちな夏にはぴったりだと思うのだ。一方、風邪やインフルエンザ、新型コロナが流行る冬には肉質がきめ細かく、しっとりとした食感のめすうなぎを堪能して、免疫力を高めるという習慣がうなぎの一大産地である西尾市一色町から始まることを切に願っている。
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