寒い冬こそ食べ頃「めすうなぎ」の知られざる魅力 うなぎの一大産地「三河一色」から生まれた

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帰宅後もめすうなぎのおいしさが忘れられず、「うなぎの兼光」に取材を申し込んだところ、一色町でめすうなぎの普及活動を支援・推進する「三河一色めすうなぎ研究会」の会計理事、大石一史さんを紹介してもらった。

「うなぎの稚魚の段階では性が決まっておらず、成長していく過程でオスとメスに分かれます。養殖うなぎの9割以上はオスで、うなぎの性は生育環境などに影響を受けやすいと考えられています。極めて稀にメスが育つこともあり、それがとてもおいしくて、メスのうなぎを育てることができたら……と考えたわけです」と、大石さん。

大石一史さん
「三河一色めすうなぎ研究会」の会計理事、大石一史さん(筆者撮影)

メスのうなぎは味もさることながら、大きくて太いという特徴もある。オスのうなぎは秋口からあまり餌を食べなくなるが、メスはよく食べるため秋冬でも成長するからだ。

メスのうなぎの研究の背景にあったのは、1980年代頃からシラスウナギ(うなぎの稚魚)の国内採捕量が減少したこと。水産庁の資料によると、1963年に232トンあったものの、1971年以降になると100トンを下回り、1990年には初めて20トンを割り込んだ。ちなみに2023年は5.6トンまで落ち込んでいる。

「大豆イソフラボン」を与えてメスをつくる

そこで愛知県水産試験場で養殖うなぎを大きく、太く育てる研究がはじまった。しかし、養殖うなぎの大半はオスゆえに大きく育っても身がかたくなりやすいという課題を抱えていた。そんなことから大きくて身もやわらかいメスに着目したのだ。

2018年4月、愛知県水産試験場が中心となって熊本大学や北海道大学、共立製薬などと研究グループを創設。農林水産省が管轄する「生物系特定産業技術研究支援センター」のイノベーション創出強化研究推進事業に採択され、資金援助を受けて研究が始まった。

研究グループは、シラスウナギに女性ホルモン(エストロゲン)と似た化学構造を持っている大豆イソフラボンを添加した飼料を与えることでメスをつくることに成功した。さらに大豆イソフラボンの種類や餌やりの量、開始時期を変えるなどして試行錯誤を続けると、メスの比率をほぼ100%にすることができた。この新たな養殖技術は2021年11月には特許を取得し、量産化に向けて動き出した。

焼いているところ
オスのうなぎは強火で一気に焼き上げるが、めすうなぎは脂が霜降り状に入っているため、弱火で何度も表と裏をひっくり返してじっくりと焼くという(筆者撮影)

「2023年にメスのうなぎを『めすうなぎ』と名付けて、その年の8月に東京ビッグサイトで開催された『ジャパン・インターナショナル・シーフードショー』でオスとメス、それぞれを白焼きにして食べ比べを行いました。結果、回答者の85%がめすうなぎのほうがおいしいと評価しました」(大石さん)

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