なんてつまらない人。早苗さんの元夫に対する軽蔑と絶望が一言で伝わってくるような表現である。当時、40代半ば。2人の娘が外で恋をし始めたことも早苗さんにはいい意味でショックだった。
「次女がアルバイトからの帰りが遅いので、理由を聞いたら、『アルバイト先で好きな先輩がいる。片付けながら話していたら時間がすぐに経っちゃう』と嬉しそうに教えてくれました。恋をしている娘と比較して、今の私は女じゃなくなっていると感じたことを今でも覚えています」
シェアハウスで25年ぶりの一人暮らし
決死の思いで離婚を切り出した早苗さん。元夫は相変わらず何も言わず、義母と義姉が懸命に引き留めようとした。早苗さんがいなくなったら世間体も悪いし義母の世話をする人がいなくなってしまうからだ。
「資産のある一族だったので、別居用の家も借りてあげるし、お金もあげるからと言われました。でも、私はとにかく自由になりたかったんです。離婚しなければ恋愛もできないでしょう。弁護士からも『いま離婚するのは損しかないよ』と言われたのですが、お金の損得は関係ありません」
次女からは「ママはパパと別れたほうがいいよ。全然幸せそうじゃないから」と以前から背中を押されていた。一方で、生真面目な性格の長女からは「家族みんなが我慢しているのに、なんでアンタだけ我慢せずに出ていくの?」と強く非難されたという。母親への愛情や共感がまったく感じられない。それ以来、長女とは音信不通だという。
離婚が決まると、元夫からは「とっとと出て行け。娘は家族だから、お前だけ出て行け」と言われたと振り返る早苗さん。元社宅を使った100人規模のシェアハウスを探して、25年ぶりの一人暮らしを始めた。
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