歴史的高騰のコメ、今秋には一転「コメ余り」か 「備蓄米の放出」は生産者にも変化をもたらす
需給逼迫対策の1つは備蓄米の放出だ。今年放出する分、翌年コメを買い戻す条件が付いており、2025年産の需要が増えることになる。需要増に対応して生産が増えると見込まれる。
もう1つは、品薄が起こりやすい端境期に、収穫を控えたコメを他用途からご飯向けに振り向けられるようにすることだ。
これまで農水省は、水田維持の名目で飼料用などに補助金を費やしてきた。2024年産のコメではご飯向け(主食用)126万ヘクタールに加え、飼料用米9.9ヘクタールなどが作付けされている。
コメ全体でみれば需要増への対応余地はある。用途変更の柔軟化で、再び「米騒動」に見舞われるリスクは低下する。
水田じゃなきゃダメですか
反面、水田に的を絞った農業政策は行き詰まり、転換を迎えている。その極みが「水張り5年ルール」の撤廃だ。
水田だった農地に麦や大豆などを作付けすると補助金が支払われる。そこに2022年、「5年に1度は水を張る」という要件が加わった。「水田である証明」を課したのだ。
コメをすぐ作れる状態ではない農地にも補助金が支払われていることを財務省が問題視し、会計検査院も改善要求をしたことが背景にある。
耕作への支障覚悟で水張りするか、毎年の補助金をあきらめるか。コメと麦・大豆などを組み合わせて経営を成り立たせている大規模生産者はとりわけ苦しい選択を迫られた。水田向け補助金なしでは耕作が続かず、荒廃に至りがちとの懸念も挙がった。
江藤農相は1月31日の国会で「水張り5年ルール」撤廃を宣言。食料自給力を高めるため、2027年度以降は輸入依存度の高い麦や大豆、飼料作物なども含め、品目ごとに生産性向上を支援する方針を打ち出した。食料安全保障の対象農地を水田から広げた形だが、財政負担との兼ね合いは避けられない。
コメの歴史的高騰の中、農政転換の論議が幕を開けた。
有識者に聞く「コメ生産調整の本当の姿とは」
2025年産は過剰生産になると見込まれるのはなぜか。小川真如・宇都宮大学助教に聞いた。
![小川真如](https://tk.ismcdn.jp/mwimgs/b/5/570/img_b5b881c72898d20cc2d2bab2d9d53566691862.jpg)
――コメは国が生産調整でコントロールしているのではないのですか。
これまで国は一度も生産調整を強制したことはない。農家の自主的な取り組みという前提だが、補助金や他の制度とひもづけられることで強い強制感をもっていた。
現在の生産調整の仕組みでは、農水省はご飯向け(主食用)などのコメについて収穫年ごとの「需給見通し」を示している。
この見通しを基に、都道府県ごと、市町村ごとに行政や生産者団体などから成る農業再生協議会が毎年、作付面積の「目安」を示すのが一般的だ。目安を参考に生産者が作付計画を立てる。
ただし、皆が「目安」のとおりに作付けをするわけではない。目安を上回って作付けする地域がある一方、西日本を中心に生産者が減り、実際の作付けが目安を下回る地域も多い。
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