歴史的高騰のコメ、今秋には一転「コメ余り」か 「備蓄米の放出」は生産者にも変化をもたらす
農水省は、JAをはじめ大手の集荷量が減った分、生産者や小規模な流通業者が「コメを抱えている」とみる。実態把握のために生産者や小規模な流通業者の在庫を調査する方針だ。
生産者には、2024年夏の品薄を機に消費者の直販ニーズが高まったとみて、手元にコメを残す動きがある。流通業者は、再び品薄に陥ることへの警戒感が強いうえ、さらなる値上がりを見込んだ抱えこみも生じていると目される。
そこで農水省は、大凶作時に限っていた備蓄米放出に向け動き出した。JAなどの集荷減を補う狙いで、放出した分、1年以内にコメを同量買い戻す仕組みを設けた。
「投機」とみなして口先介入
1月24日に江藤農相が備蓄米放出に言及すると、業者間取引のスポット価格の上昇は止まった。
「アナウンス効果が出ている」――。1月31日、備蓄米放出の諮問を受けた審議会の部会では委員の1人がそう指摘した。まるで為替市場への口先介入のようだ。
「投機的でマネーゲームということは明らか」(江藤農相)というものの、投機筋は価格の下落局面で抱えたコメを売りに出すはず。ただその量は読めない。品薄への懸念が備蓄米放出で払拭されるかどうかは量や価格など具体策次第で、「皆が影響を見極めようとしている」(流通業者)。
備蓄米放出の概要は早ければ2月10日の週内に示される見通しだ。
しかし、このような事態も今秋までには一変しそうだ。「2025年産は過剰生産になる可能性が高い。夏にはそれが明らかになり、価格は落ち着くだろう」。そう予想するのは、コメ政策を専門とする小川真如・宇都宮大学助教だ。
なぜ過剰生産になるのか。生産者において増産の動きがもともとあるところに、新たに設けられた需給逼迫対策が拍車をかけるとみているからだ。
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