歴史的高騰のコメ、今秋には一転「コメ余り」か 「備蓄米の放出」は生産者にも変化をもたらす

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――これまでの減反政策はコメを作らせないようにしてきたのでは。

「生産調整=減反」と言われるが、需要が減り続けてきたから生産も減らしてきた。

生産調整は辞書的にいえば需要に応じた生産抑制を意味する。しかし「生産の調整」と解釈すれば、需要が増えたら生産を増やして調整することも重要だ。2025年は適切にコメを増産できるかどうかが試されている。

2025年産にかけて農水省が示す需給見通しがタイトであることから、各地の農業再生協議会は作付面積の目安を積み増している。

生産者も、コメの争奪戦や価格高騰を受けて、目安を上回って作付けしたり、コメ作りからの撤退を延期したりする方向に動くだろう。

さらに、農水省が1月末に示した政策が影響する。

1つは、大凶作でなくても、備蓄米を放出できる仕組みだ。放出した分、1年以内にコメを買い戻す条件が付いているため、いま備蓄米を出せば、2025年産の需要が増えることになる。

もう1つが、コメの品薄、あるいはコメ余りが明確になりやすい端境期に、収穫前のコメを他用途からご飯向けに振り向けたり、逆にご飯向けから他用途に振り向けたりできるよう制度変更することだ。

農水省は昨年から案を示していたが、1月末に改めて示されたことで4月から制度変更するのは確実とみられる。

米騒動は避けられるが、財政負担は増す

――他用途のコメとは。

ご飯向けの需要が縮小する中、農水省は家畜のエサにする飼料、輸出、米粉といったコメの「新規需要」を拡大しようと補助金を払ってきた。用途は違ってもほとんどが同じコメだが、新規需要として補助金を受け取るには6月末までに作付面積を申請しなければならない。

2024年は、7月末に農水省が示した「需給見通し」でご飯向けコメの在庫が過去最低水準になったことが初めて公にされたが、その時点では収穫前のコメの用途を飼料などからご飯向けに変更できなかった。そこで、需給状況に応じて用途を振り向けられるよう、8月20日まで変更を受け付けることにした。

生産者はひとまずコメの作付けを増やしておいて、8月20日までの時点で、2024年夏のようにコメが品薄になればご飯向けに振り向け、需給が緩み価格が下がるとみれば飼料用などに振り向けられる。

――再び米騒動が起きるのかと消費者に不安があります。

需給調整については安心できるだろうが、財政負担が増す可能性は高い。増産したコメを飼料用に回せば、補助金が膨らむからだ。

黒崎 亜弓 東洋経済 記者

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くろさき あゆみ / Ayumi Kurosaki

特に関心のあるテーマは分配と再分配、貨幣、経済史。趣味は鉄道の旅、本屋や図書館にゆくこと。1978年生まれ。共同通信記者(福岡・佐賀・徳島)、『週刊エコノミスト』編集者、フリーランスを経て2023年に現職。静岡のお茶屋の娘なのに最近はコーヒーばかり。

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