松下幸之助の「感謝の心」は自然と伝わった

PHPが支払う給料にも心から感謝

松下電器の成功への出発点は、感謝であったと言っても過言ではないだろう。

「商売を始めたころは、誰でもそうやけど、もう必死やからな。わしの経験でもいっとう最初の製品が売れたときの感激は、言うに言えんほどのものやった。うん、アタッチメント・プラグが予想以上の評判で、わしも驚くほどの注文が殺到したんや。結果はそうではあったけれども、最初はわからんわね。売れるか売れへんか、どうやろうか。もう胸も高鳴るわね。そういうときに、よっしゃ、買うてあげようということで、初めてうちの商品が売れてくれた。

今でもそのときのことを思いだすと感激やで。買うてくれたお客さんが店を出て行く、そのお客さんの後ろ姿に、思わずわしは手を合わしたで。ほんまに、ありがとうございましたと、そのお客さんの姿が見えなくなっても頭を繰り返し下げた」

松下だけではあるまい。商売を始めた人は誰でも、最初はみんな同じであろう。

会社が大きくなると忘れてしまう初心

ところが、会社が大きくなるとそうはいかなくなる。明日はどうなるのかと1日1日心配していたのが、次第に最初の感激、感謝の心というものを忘れてくる。いつしか、お客さまが自分のところの商品を買うのは当たり前だと思いだす。有名な会社だからと、社員も社長も横柄な態度をとるようになる。

ことに今の日本のように、豊かな国では、スタートの時点から恵まれている。売れなくても飢え死にはしない。自分でつくりあげた繁栄でもないのに、最初から大企業の社員気どりである。可哀想なことに、感謝の心を味わう機会もない。愚かにも思いあがり、傲慢にもお客さまあっての会社であることを忘れて威張りちらす。

しかしそういうことでは、知らず知らずのうちに会社はゆっくりと衰退へ向かう。感動を与えられない会社から、お客さまは潮が引くように離れていく。感謝の心を持たない人間を見て、感動する人は一人もいないからである。

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