「きみ、わしにこんなにくれんでもええよ。わしは何もしておらん。きみたちが一生懸命に力を合わせて成果をあげておるのだから。けど、ありがたいことや。こうやってきみたちから手当をもらうことは」
松下幸之助は毎月そう言いながら、PHP総合研究所からのわずかばかりの給料を受け取ってくれた。それは、本当にわずかな額であった。しかも、いつも松下は私が手渡した給料袋を両手に挟んでなでていた。
松下の指示と助言がPHPを導いた
「何もしておらん」などということはない。常々細かい指示を出し、指導をしながら今日のPHP総合研究所を築きあげてきた。松下の書いたベストセラーがなければ、これほど出版活動がスムーズに始められることもなかった。松下の的確な指示と助言がなければ、発展はなかった。第一、私自身、松下の助言がなければ、経営をすすめていくことはできなかった。松下が薄い給料袋をそのように遠慮がちに受け取る必要はまったくなかったのだ。
だから私は、毎月のそのような言葉と態度に恐縮しながら、「本当にありがたい」と思ってくれる松下の心が感じられて、いつも感激した。
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