ローン返済25年、私財注いだプロレス美術館の凄み "人間山脈"リングシューズから極悪女王の髪まで

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部屋の周囲には、アントニオ猪木、ジャイアント馬場、初代タイガーマスクなど、昭和の時代を中心に活躍したプロレスラーのアイテムを展示。パネルで顔を表現しながら、リングの周辺に選手たちが佇むかのような展示を、手作りで表現している。 

館長の湯沢利彦さん。プロレス愛や美術館の運営について熱く語っていただいた(写真:著者撮影) 
3カ月かけて作り上げたミニチュアのリング(写真:著者撮影) 

資金不足は愛と創意工夫でカバー 

前回の記事でも取り上げたように、ローン返済やリストラなど、金銭的な苦労が多かった湯沢さんにとって、美術館にかけられるお金は限られている。そこで、展示のあらゆるものは手作りで対応した。 

ミニチュアのリングもその一つだ。ホームセンターで購入した木材で土台やコーナーポストを作り、ロープはエアコンのホースを、コーナーポストには断熱材を再利用して作り上げた。 

リングのマットには、全日本プロレスで使われているクッション材の発泡倍率を参考にしたものを使用するというこだわりも見られ、大きさは実際よりは小さいながらも、形や色合いは見事に本物を再現。リングに上がることは可能だが、リング上で暴れると壊れてしまう点には要注意だ。 

半年かけて作った天井照明。ライトは大阪の日本橋を練り歩いて買い集めた(写真:著者撮影) 

リングの真上には、リングを照らす照明も見事に再現。こちらもホームセンターで購入した木材の板を14等分にカットし、90度と45度の角度で木工用ボンドでつないで作られている。はがれやすい箇所はホチキス針で留め、灰色のカラーペイントを塗って完成。 

離れてみると本物そっくりではあるものの、間近で見るとホッチキス針でつなぎ合わせている様子が垣間見え、湯沢さんが一つ一つ手作りした情熱と苦労がうかがえる。 

顔を小さくすることでパーカーを際立たせた(写真:著者撮影) 

リング周辺の展示にも、湯沢さんのこだわりが詰まっている。 

ジャイアント馬場が実際に着ていたパーカー、さらにはアントニオ猪木が使用していたタオルとジャケットは、本人が着ているかのような展示を手作りで再現。本人の身長と同じ高さに合わせているほか、馬場と猪木が最終的には和解した様子を示すために、馬場の左手が猪木の肩にかかっているところもミソ。 

自身が見て楽しむよりも、いかに他の方に楽しんで見てもらえるかに意識がいっているからこその、細部まで考え抜かれた展示である。 

プロレスラーたちが歩んできた物語が展示に表れているように、湯沢さんのプロレス愛が諸々に感じ取れるのだ。 

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