フランス映画の巨匠が撮る「映画への深い愛」 デプレシャン監督に取材、仕事観などを聞いた

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――しばしばエンタメ映画好きと、アート系映画好きの間には断絶があるように思うのですが、両者のよさをしっかりと受け止めているデプレシャン監督は素晴らしいなと思います。

私の立場としては、映画に関して優劣はない、という考えを持っています。たとえば日本の映画史に残る作品として(梶芽衣子主演の)『女囚さそり』があります。この映画は非常にエロティックで暴力的なんですが、これ以上ないというくらい素晴らしい作品。私にとっては強烈なインパクトがあった映画なんです。

このようにジャンルに縛られることなく、娯楽であるから優れている。あるいはその作家主義の映画だから優れている。もしくは劣っているなんてことはない。私の映画に対する愛というものをわかっていただければと思います。

ほかの映像作品をどう引用?

――この映画には世界初の映画であるリュミエールの作品から、ヒッチコックの『北北西に進路を取れ』、黒澤明の『乱』といった映画、『ダイ・ハード』『ターミネーター2』『マイノリティ・リポート』といったハリウッド映画まで、50本以上の映画のフッテージ映像が劇中に登場します。これはアメリカでいうところの「フェアユース」(一定の条件を満たせばオリジナルコンテンツの一部を他の作品に引用できるというアメリカの著作権法)のような形でつくられているものなのでしょうか?

フランスでは著作権は非常に保護されているので、「フェアユース」的な法律はないんです。ですからこの映画の制作にあたっては著作権の問題をひとつひとつクリアしていかなければならなかった。

それは非常に大変な作業で、時間も長くかかりましたし、それからコスト的にも非常に高い予算が必要でした。

映画を愛する君へ デプレシャン フランス
本作は、少年時代のデプレシャン監督がはじめて体験し、夢中になった映画館の思い出からはじまり、そこに観客のインタビューなどを織り交ぜながら、映画館という空間がもたらす魅力を伝えるという内容となっている。© 2024 CG Cinéma / Scala Films / Arte France Cinéma / Hill Valle

ここでひとつの例を挙げましょう。この映画の中にはスティーブン・スピルバーグ監督の『マイノリティ・リポート』のある場面が出てきます。プロデューサーがその使用に関して、使用料があまり高くならないようにするために交渉しました。結果、その使用の条件として、私が映画に使うために、スピルバーグ監督に直接手紙を書かなければいけないということになりました。

するとその後、プロデューサーが編集室にやってきて『今度はトム・クルーズの許諾が必要だ』と言ってきた。ですから今度はトム・クルーズに手紙を書いて、そして彼から直々に認可を受けることになりました。

それからしばらくして、プロデューサーがふたたび真っ青な顔をして私の編集室に入ってきて。今度はトム・クルーズのスタントマンの許可も必要だと言ってきた(笑)。これはあくまでひとつの例として挙げたわけですが、そのひとつひとつの許諾というのは非常に時間のかかる作業になりました。

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