フランス映画の巨匠が撮る「映画への深い愛」 デプレシャン監督に取材、仕事観などを聞いた
――映画の仕事を30年以上続けるということは、才能だけでなく、運や努力なども必要だと思います。デプレシャン監督がここまで仕事を続けるために必要だったことは何だったと思いますか?
私が映画監督として心がけていることは、まずは自分に忠実であること。そして私自身、人にストーリーを伝えるのがすごく好きなんです。だから今回の映画では、登場人物のメランコリックな心情やストーリーをどのように展開していくかがすごく難しくて。どういうふうに描き出すかが最大の課題でした。そこで出会ったのが若い撮影監督のノエ・バックでした。彼と出会ったことによって非常に新しいエネルギーをもらいました。
――監督にとって、勝手知ったる仲間だけでなく、新しい世代と一緒に仕事をするというのも大切だということですか?
本当に素晴らしい体験をさせてもらいました。特に今回はミロ・マシャド・グラネールという若い俳優と一緒に仕事をすることができた。彼はカンヌ映画祭の(最高賞)パルムドールを獲得した『落下の解剖学』で素晴らしい演技を見せた俳優なのですが、そういった若い人たちとの仕事はいろいろと刺激を受けますし、素晴らしい機会を得ました。
映画では多くのハリウッド映画が引用
――この映画ではアート系映画だけでなく、数多くのハリウッド映画が引用されています。デプレシャン監督はしばしば「アートフィルムだけではなく、娯楽映画も観るべきだ」と語っていますが、人はどちらかに偏ってしまいがちです。そうした“雑食”であることから見えてくるものはなんですか?
よく映画というのは芸術であると言われることがありますが、私はその意見には賛成できません。映画というのは“芸術になろうとしている存在”なのだと思うのです。
これはひとつの例ですが、『ダイ・ハード』という映画の中で、窮地に立たされたブルース・ウィリスが高い建物の外に這いつくばるシーンがあります。窓を開けて入らなければならないところで、銃でその窓を撃つという場面なのですが、この映画というのはアクション映画であり、娯楽映画である一方で、その枠をも超えてなんて美しいシーンなんだろうと思ったんです。アクション映画であっても、エンタメを超えた美しさや芸術性を追求することができるんです。
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