死を忌避し苦しみ長引く「安楽死」を巡る正論とは ALS患者は最後に眼球とまぶたしか動かせなくなる

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死が怖い人へ
自ら死を選べる道も必要ではないか(写真:genzoh/PIXTA)
医者として多くの患者を看取ってきた医師兼作家の久坂部羊さんには、死や老いについての著作も数多い。そんな久坂部さんが死生観についてまとめた新刊『死が怖い人へ』では、日本ではまだ認められていない安楽死に対する考えが述べられている。話題になった嘱託殺人事件を通じて、医者としてのリアルな感情をつづる。

ALS嘱託殺人に思う

2024年3月に京都地裁で、ALS嘱託殺人の被告の医師に、懲役18年の判決が下された。

事件は2019年11月に京都で起こった。全身の筋肉が萎縮し、最後は眼球とまぶたしか動かせなくなる難病、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の女性患者さん(当時51歳)から、SNSを通じて安楽死の要請を受けた医師が、女性に薬物を投与して死亡させたのである。

日本では安楽死が違法であること、SNSで依頼を受けたこと、主治医でもなく、前もって診察もしなかったこと、報酬を受け取っていたことなどが問題とされた。

その一方で、女性はSNSで医師と安楽死の打ち合わせをし、「先生だけが救いであり希望です」などのメッセージも送っていた。

世間の反応としては、一部に被告医師の行為を擁護する声もあったが、「命を救うことが使命の医師が、命を奪うなんて許せない」「医療を悪用した殺人」「命を軽視するのは言語道断」などの批判が多かった。

裁判を傍聴したALSの患者さんの中には、「何より大切な命を軽んじた行為だと示してほしい」と訴えた人もいた。女性患者さんの生活介護をしていたヘルパーは、テレビ番組でインタビューに答えて、「生きていてほしかった」とつぶやいた。いずれも死を全否定する側の意見で、賛同する人も多いだろう。

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