ロシアーウクライナ戦争が起こった歴史的な必然 「東欧を制する者が世界を制する」100年前の格言
ミアシャイマー氏は、「この問題を解決する唯一の方法は、ウクライナを緩衝国家(緩衝地帯の役目を担う中小国)に留めておくことだ」と言います。欧米は、ロシアの置かれた立場を冷静かつ現実的に考え、ウクライナを欧米にもロシアにも寄り切らない中立緩衝国であり続けさせることこそが、長期的な平和に繫がると言うのです。
ミアシャイマー氏の議論は、地政学の観点から捉えると非常に興味深いものです。というのも、ロシアに関してこれと驚くほどそっくりの主張が、ウクライナ危機の100年前になされたからです。その主張を行った人物こそ、地政学の父、ハルフォード・マッキンダーです。
冷戦終結後と100年前の共通点
ウクライナ情勢が徐々に悪化し始めた冷戦終結後の時代と、その100年前の第一次世界大戦終結後の時代には、ある共通点があります。それは、楽観論が蔓延していた点です。
冷戦終結後は、40年以上世界を二分してきた冷戦構造がようやく融解し、アメリカ率いる西側陣営とソ連率いる東側陣営が和解した時代です。欧米人は、この事実をもって、「ようやく世界から大国間争いが永遠になくなるときが来た」と安堵しました。「これからの時代には、欧米流の自由民主主義が全世界に広がり、ロシアや中国も欧米と手と手を取り合って平和を謳歌する」と、多くの人々が大真面目に考えていたのです。
実は、このような楽観論は第一次世界大戦終結後にも広がりました。第一次世界大戦は、当時の時点で人類史上最大規模の破壊・被害者を出した戦争でした。これほどの戦争を経た結果、人々は平和の尊さをあらためて嚙み締め、「こんなに大きな戦争はもう二度と起こらないはずだ」と確信していました。実際、当時この戦争は「戦争を終わらせるための戦争(The War to End Wars)」と呼ばれていたほどです。
当時のウィルソン米大統領も、この戦争における民主主義陣営(イギリス、フランス、アメリカなど)の勝利をもって、「民主主義こそ人類の理想であり、それを世界中に届ける責務がある」と発表しました。冷戦終結後と奇妙なほど似ています。
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