ロシアーウクライナ戦争が起こった歴史的な必然 「東欧を制する者が世界を制する」100年前の格言

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「欧米における通説によれば、ウクライナ危機の責任はほとんどがロシアの野心にあるという……しかし、この通説は間違っている。この危機の真犯人は、アメリカとヨーロッパの同盟国だからだ。

この問題の真の根源は、NATOの東方拡大による、ウクライナをロシアの影響力から切り離し、欧米に統合しようとする戦略にある……1990年代半ば以来、ロシアの指導者たちはNATO拡大に断固として反対してきた。

そして近年では、ロシアにとって戦略的に重要な隣国が欧米の砦と化すことを決して容認することはない、と明言してきた……プーチンは、NATO の海軍基地が置かれる恐れのあるクリミア半島を占領した上で、ウクライナが欧米への接近を止めるまで情勢を不安定なままにするつもりだ……プーチンの反発は驚きには値しない。

結局、ロシアの裏庭に進出し、その核心的な戦略的地位を脅かしてきたのは欧米だったのだから。プーチンはこのことを繰り返し強調してきた。それにもかかわらず、欧米の指導者たちが不意を突かれた理由は、彼らが国際政治について誤った見方をしていたからに他ならない。

彼らは現実主義の論理は21世紀には不要であり、法の支配、経済的相互依存、民主主義などの自由主義原則によって、ヨーロッパの統一と自由が保証されると思い込んでいるのだ。しかしこの壮大な構想はウクライナで失敗した」

1990年代からウクライナ戦争を予見

ミアシャイマー氏は、1990年代の早い段階からウクライナ戦争を予見していた数少ない学者でした。それが可能だった理由の1つは、ロシア視点の地理的現実を直視していたからでしょう。ミアシャイマー氏は早くも1993年の記事でこう述べていました。

「ロシアとウクライナの関係は今後悪化する可能性が十分にある。第一に、両国は安全保障の軋轢が発生しやすい条件を持っている。ロシアとウクライナのように、無防備で長い国境を共有する大国は、しばしば安全保障上の懸念から対立に陥る……ロシアとウクライナが戦争をすれば大惨事になるだろう。大国を巻き込む戦争は莫大な犠牲と世界的な混乱を引き起こし、他の国々を巻き込む可能性さえある。ロシアがウクライナを再征服するようなことになれば、ヨーロッパ全体の平和が損なわれるだろう」

2014年には、あらためてウクライナが特異な地政学的立場にあると指摘しました。

「プーチンの行動を理解するのは容易だ。ウクライナは、かつてナポレオン時代のフランス、帝政ドイツ、ナチス・ドイツがロシアを攻撃するために通過した広大な平地に位置している。そのため、ウクライナはロシアにとって戦略的に非常に重要な緩衝国家なのだ……アメリカは地政学の基礎の基礎を理解するべきだ。すなわち、大国は常に自国領土近くの潜在的脅威に敏感である……仮に中国がカナダとメキシコと軍事同盟を結んだら、と想像してほしい。アメリカは必ず激怒するはずだ」

(出所)『あの国の本当の思惑を見抜く地政学』
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