「私のことをこうして思い、笑顔や涙を送ってくれる皆さんに、ただただありがとうと伝えたい。それが私の最後の言葉です」
時に身を乗り出し、瞬きもする。締めの言葉を話しながら口角を上げて穏やかに微笑む。その自然な仕草は、知らなければとてもAIで生成されたとは思えない。
この90秒の映像は、バーチャルAI故人サービス「Revibot」によって作られたものだ。AI生成を手がけるITベンチャー・FLATBOYSの技術協力を得て、冠婚葬祭事業を手がけるアルファクラブ武蔵野が2024年12月10日に提供を始めた。初期費用は9万9800円(税込み)からとなる。
これだけの品質のAI故人が、個人でも十分手の届く価格で得られる。しかも納期が短いので、葬儀場にも持ち込める。すごいことだ。ただ、それ以上に怖さを感じる人も少なくないだろう。
その怖さは、AIが生身に近づく過程で生じる「不気味の谷」とはまた違い、人間の尊厳に関するタブーに踏み込む警戒感に近いかもしれない。
デジタル故人を囲う「警戒の壁」
AI故人を含めたデジタル故人を商品として捉えたとき、この警戒心は克服すべき最大の壁といえる。そして、この壁を越えた例はまだほとんどない。
たとえば、2014年にマサチューセッツ工科大学の起業家プロジェクトから生まれた「Eternime(エターナム)」は故人のSNSなどから集めた情報からアバターを作る構想のサービスで、4万6000人を超えるユーザーからの注文を受けたが、倫理的な反発を解消する糸口を見つけられないままスタートできずに何年も足踏みし、やがて公式サイトを閉じてしまった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら