「AIで復活の故人が喋る」不気味の谷より心配な事 日本で始動したAI故人ビジネスの実情を追う

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死亡者が増えている間は葬儀件数も増えるが、縁者の高齢化も進んでいるので、皆が葬儀会場に集まって通夜に葬儀・告別式、火葬などまで立ち会うのは難しい状況が増えている。また、経済的な事情から盛大な葬儀が実施できないケースも増えた。葬儀業界をとりまく環境は年々厳しさを増している。

「葬儀は年々コンパクトになっています。我々の葬祭事業でも、やがてはご遺体を火葬場に搬送することしか求められなくなるかもしれません。それでも故人様を偲びたい思いまではなくならないはずです。その思いに応える新たな手段を模索しているのです」(小川氏)

2024年9月にVR墓地サービス「メタバース霊園 風の霊」を立ち上げたのもその一環だ。スマホやパソコンでログインすると、故人の写真や動画が掲げられた専用ルームにアクセスできる。タイミングをあわせれば他の縁者とチャットしながら追悼することも可能だ。

現在は無料で提供しており、Revibotで生成した映像を組み込むといった連携も選べる。登録されたVR空間は2025年1月時点で約360件。ゆっくりとしたペースで増えているという。

風の霊のマイルーム(筆者撮影)

インタラクティブはあえてオフ

とはいえ、時間がすべてを解決してくれるわけではない。悪目立ちして拒絶されたら壁を越えるどころの話ではなくなる。そこで同社は宗教学や倫理学、AIガバナンスなどの専門家と論議するために社内に倫理委員会を設置。そこでいくつかの制約をRevibotの輪郭に組み込むことにした。

生成したAI故人を公開する場を葬儀会場や「風の霊」、提携する納骨堂内に限定したことと、対話機能をあえて省いたことが象徴的だ。小川氏は「技術的には双方向のやりとりができる状態で、どこでも公開できるかたちで納品することも可能ですが、AIのリスクを考えて判断しました」という。

双方向のやりとりは語弊や誤解を生みやすい。意図的な改変を許せば、遺産相続で有利な発言を捏造するなどの悪用も簡単にできる。まずは固定した映像として納品するかたちをとり、発言を調整したい場合は同社への依頼を通して対応すると決めた。

また、AI故人をいたずらに半永久的な存在にしないことも意識したという。AI故人を保存するサーバーの使用期限は、1年や2年の短期契約も選べるようにしている。「死別の悲しみを克服するなかで、故人様を忘れることが大事なケースもありますから」(小川氏)。

いわば、時空的にも心情的にもAI故人の在り方をコントロール下に置くことで、何が起きるかわからない怖さを徹底的に抑える戦略といえる。

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