2050年のシン・日本経済システムをデザインする 失われた40年回避のための「3つの政策」とは?

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政府が民間金融機関よりも目利きに優れているとは思えない。かつてはともかく21世紀においては、それはほぼない。前回のラピダスの議論に戻ってしまうかもしれないが、いやそういう議論になる案件はまだしも、明らかに、どう考えても将来の経済成長に貢献し、投資としてリターンが出てくるとは思えないものに、ほとんど支出している。

要は、救済であり、バラ撒きである。そしてそれは常に効率が悪い。子供手当を、子供がいる家庭全員に配るよりも、貧困家庭は貧困対策を行い、子供にとって教育投資効果の大きい託児所、学童を運営するための人材に投資するほうが断然いい。そういう投資、支出ばかりなら、財政赤字があってもかまわない。それは資産となり、将来ペイするからだ。しかし、ただバラ撒くのであれば、それは、その分、民間資金として投資されたはずのものを政府が分捕ってバラ撒いているだけのことで、経済成長を阻害する。

いまこそ必要なのは傾斜配分だ

いまこそ、傾斜配分が必要だ。それは、政府から民間に金を流すことだ。国民に金を配って、投資信託の「オルカン」で海外の株を多く買わせても何の意味もない。資金もいまや限られている。資金を使うということは、人材もそれに巻き込まれるということであるから、金も人も、貴重なのであって、できる限り、政府の手を離れて自由に使えるようにするべきだ。

だから、財政赤字、政府債務は減らし、借り換えも含めた国債発行額をできるだけ減らし、個人の預金も企業の余剰資金も、実物投資に回させることが必要だ。企業投資も、必ず、それには投資主体、それを実物投資として実行、建設、製作する人材が必要であるから、リターンの高い有効な支出主体に金が流れるようにするべきだ。この意味で、設備投資減税は廃止すべきであり、DX投資促進も、やりたくない企業にまで節税のためにやらせるべきでない。

第3に、このような支出の無駄の多くは、政府、行政機構の手抜きの結果である。傾斜配分には、目利き能力が必要である。生活保護も生活困窮者、児童虐待対応、すべて人手が必要だ。手間と時間が必要だ。これらを削減しすぎている。

社会的ニーズは高まり、世の中は複雑になっているのに、公務員である必要はないが、これらの担当の人材が少なすぎる。増やすべきところを減らしている。人材、および彼らの時間は貴重なリソースだ。人材とその時間を動員できるように、効率化、傾斜配分をする目利きが必要だ。

だから、公務員は増やす。NPOとの協力をさらに強化する。とことんフレキシブルにする。非正規を正規雇用にするのではなく、非正規という存在自体をなくし、誰でも同じ仕事を同じ給料と同じ地位、尊敬を受けて働けるようにする。なぜなら、投入時間のリソースが足りないからだ。

企業も、副業促進などしている場合でない。週4日。あるいは1日6時間で十分な給料を払い、ワークライフバランスではなく、家庭のこと、地域のこと、NPO活動など、市場経済とは別の活動をする時間を確保する必要がある。

今回の試行錯誤はここまでにする。「システムを提案した」とは到底いえないが、基本的な考え方は「供給力不足を解消する」「金、人、時間は希少な資源であり、無駄に使わないようにする」ことが重要であり、効率的な動員システムが必要であり、そのシステムは、インセンティブなど試行錯誤で柔軟に設計する必要があるが、今回はまずはともかく、基本哲学の認識を社会全体で共有するために試論を試みた。ぜひ、建設的批判をお待ちしている(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースや競馬論などを語るコーナーです。あらかじめご了承ください)。

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