2050年のシン・日本経済システムをデザインする 失われた40年回避のための「3つの政策」とは?

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一方、1980年代以降はどうだったか。1980年代はバブルで金銭的には余裕があり、新しいシステムに移行するには絶好の機会だった。だが「円高不況が来た」という間違った認識で時代を受け止め、始まっていたバブルをさらに加速させた。ここに、典型的な誤りが始まっている。

「円高は悪であり、必要なのは需要であり、輸出と需要が何よりも重要だ」ということになった。その後は、円安政策と財政出動での需要喚起政策に終始した。バブル崩壊、構造転換で生じている経済の問題を、需要不足の問題とすり替え、需要を政府が補うことに終始した。

2000年代に入ってもそれは続き、現在まで何も変わっていないどころか、年々悪化している。失われた30年の間、常に需要不足という認識を続け、だから財政出動、金融緩和を続け、永遠に供給力は戻ってこなかった。

「供給力強化こそ重要」という認識が広がってきた

新しいシステムを作るためには、正しい現状認識が必要だ。30年失い続けたおかげで、正しい議論が少しは伝わるようになった。

みずほ銀行のチーフマーケット・エコノミストである唐鎌大輔氏も「東洋経済オンライン」の記事で、「円安に盲従する社会規範は明らかに2022年以降に変わったという確信がある。円安がある程度の不可逆性を帯びた段階でこの意識変化が起きたことは悔やまれるが、結局、人間は経験からしか学べないということかもしれない」と述べている(「今や錦の御旗となった『実質賃金の上昇』の残念感」(2024年12月17日配信)。

日本経済の問題は需要不足によるものではない、ということを明白にしたのが、異次元緩和の成果だ、と黒田東彦・前日銀総裁自身が2014年6月の講演ですでに述べている。

「大規模な金融緩和、財政支出、民間活動の活性化によって需要が高まってきた結果、水面下に隠れていた供給力の問題が顕現化してきたのです。こうした状況のもとで、中長期的な観点から供給力を強化することが重要だという認識が広がってきたように思います。このように、実際に問題として顕現化してきた今こそが、課題の克服に向けた取り組みを進めるチャンスです」(2014年6月23日 経済同友会会員懇談会における講演)

さらに、コロナショック後、昨今、人手不足、エネルギー、資材、部品の供給力を確保することこそが最優先課題だという認識はさらに深まった。そして、この流れは10年以上続くであろう。

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