世界で最も劣悪な「台湾マグロ漁船労働」の実態 日本の食卓を飾る水産物の知られざる人権問題

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──台湾漁船でのインドネシア人など外国人労働者の実情についてお話しください。

ハディ 私たち外国人船員労働者は台湾から遠く離れた船上で10カ月から1年にわたって過酷な労働を強いられています。陸上とのコミュニケーションの手段もなく。孤立状態にあります。漁の際には十分な食料も休息も取ることができず、時には20時間以上も船上でぶっ続けで働かされることがあります。事故や病気も日常茶飯事ですが、適切な医療を受けることもままなりません。

ハディ/インドネシア船員の集いフォーラム(FOSPI)創立メンバー、会計、漁師。台湾で働くインドネシア人漁業労働者の福祉のために活動するかたわら、ソングライター、バンドミュージシャンでもある(撮影:梅谷秀司)

アドリさんという船員は、釣り針が目に刺さって失明したのに船長は病院に連れていくことを拒否しました。アドリさんは現在、視力と生計手段を失ったことに対する補償を雇用主や人材派遣会社に求めています。しかしいまだに何の成果も得られていません。

劣悪な待遇に労働者がストライキも

2024年初め、ある船で事件がありました。出港して数カ月後、船内の食料が底を突き、労働者は賞味期限切れの野菜や釣りえさを食べるしかなくなりました。足が腫れ上がり、腹痛がひどくなったシックリさんという労働者は治療の機会を求めましたが、船長はそれを拒否しました。シックリさんは欠勤によって賃金が減ることを恐れ、病気でも働き続けました。

悲惨なことに、虐待に耐え続けたシックリさんは3カ月後に船上で死亡しました。この時も船長は陸に戻ることを拒否し、シックリさんの遺体は船内の冷凍庫で2カ月間も放置されました。あまりにもひどい事態に憤った労働者が船上でストライキを起こしました。こうした実例は氷山の一角です。

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