「東インド会社への復讐」画策した男の悲しい末路 世界初の空売りはどう行われた?歴史振り返る
お金(貨幣)にまつわる歴史は、現代の金融、株式市場を考えるうえでも重要な知識です。たとえば世界初の「株の空売り」が行われたエピソードからは、「株式市場の重要な点は上昇することではない。株式市場の重要な点は、株の適正な価格を見極めることにある」ことがわかります。ジャーナリスト・作家のジェイコブ・ゴールドスタインが上梓した『マネーの世界史 我々を翻弄し続ける「お金」エンタテインメント』(松藤留美子訳)を一部抜粋・再構成してお届けします。
オランダでの株の空売り
世界の歴史上初めて行われた株の空売り(ショート)がどんなものだったか見れば、憎まれるわけもわかるだろう。それでも、空売りが社会にとって有益なもので、ひどく過小評価されているわけもわかるはずだ。
オランダの商人イサック・ル・メールはVOC(Vereenigde Oostindische Compagnie/連合東インド会社)の創設者のひとりで、アムステルダム最大の株主でもあった。VOC創立の数年後、ル・メールは他の取締役たちと争うようになった。
詳細は不明だが、どうやらル・メールが航海の資金の一部を提供したにもかかわらず、ル・メール本人の主張する出資額を会社側が払い戻さなかったということのようだ。
ル・メールが会社から大金をだまし取るために経費を水増しした可能性もある。これが訴訟にまで発展した。取締役たちから持ち株を凍結されたル・メールは、アムステルダムを離れて田舎に引っ込むと復讐を企てた。
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