しかし、近年ではそれが拡大解釈されて、天候が理由でなくてもキャンセルするケースが増えてきた。たぶん「仕事が入ったから」とか「風邪気味だから」とかで簡単にキャンセルする人が出てきたと思われる。
特に、プレー日間近の「ドタキャン」をされると、ゴルフ場側には空いた枠を埋める時間的な余裕がない。連絡したからいいというものではなく、対外的に仕事をしている人なら「ドタキャン」の迷惑具合は常識としてわかっているはずだ。
予約がすぐに埋まる週末や大型連休に「とりあえず」予約して、都合がつかなければキャンセルする。あるゴルフ場によると、コンペで10組の予約があったが、プレー日前日に組み合わせ表が送られてきて、そこには7組分しか記載がなく、何の断りもなく3組がキャンセルされていた、というケースもあったという。
キャンセルによる損失に向き合うと…
そうしたキャンセル無料の拡大解釈に歯止めをかけるのが、今回のPGMのキャンセル料の徴収となる。
ビジター予約に適用した後の状況をPGM営業推進部の門伝正広部長に聞いたところ、「キャンセル料が発生するようになってから100件ほどの声をいただいています。半数は『他では取っていない』といったネガティブなご意見でした。あとの半数はご理解いただいているものと、『高齢者は体調不良になりやすいので取らないでほしい』といった要望でした」と話した。
PGMでキャンセル規定を検討し始めたのは2022年。コロナ禍が落ち着き、コロナ禍中に感染リスクが少ないゴルフが注目されて新たに始める若い層が増えてきたことは当時紹介したが、そうした人たちがゴルフ場に来るようになった。
コロナ前の2019年9月~2020年3月と2023年度の同期を比較すると、女性は123%、39歳以下は121%に伸びたという。「女性や若い世代の新規ゴルファーが増え、2020年8月ごろから予約が急増した。メンバーを含めて予約が取れない状態が続き、予約枠を広げたり時間帯を増やしたりしても追いつかなかった」という。
ところが、同じゴルフ場でデータを取ると、いっぱいのはずの土・日曜日の入場者の伸びは1.4%(2022年度)ほどしかなかった。それはキャンセルの影響だった。
「ゴールデンウィークに調べたら、36ホールのコースで98枠が予約されていたのに、終わってみれば70組だったということもありました」(門伝氏)。23年は全予約の8%、約72万人の直前キャンセルが発生したという。
「とりあえず予約しておこうということではないかと推定できます」(門伝氏)。1人1万円とすれば72億円がキャンセルで失われていることになる。
何より、キャンセルはゴルフ場側に負担がかかる。「売り上げを失うのもそうなのですが、予約に応じた準備をしているので人件費の増加、食材の仕入れのコスト増やフードロスなども起きる」と、門伝氏。キャンセルが増えれば入るものが入らず、出ていくだけになる。結果、プレー費の値上げなどにもつながりかねない。
そのようなとき、ロシアのウクライナ侵攻で始まった世界的な物価高騰もあり、PGM傘下のゴルフ場担当者から「キャンセル料を取れないか」という声が上がったという。
そこで、そのゴルフ場独自で理事会決議をし、キャンセル料を徴収するようにしたところ、キャンセルが減少。実際に効果が確認できたことから、PGMの運営するコース全体でキャンセルポリシーを作り、実行していくことにした。
「何十年もキャンセル料を取っていなかったので、スキームをまとめるのに時間がかかった」という。地域性などもあって、キャンセルポリシーは4パターン作ってゴルフ場側で選択した。
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