基地局を「AIの頭脳」へ変えるソフトバンクの挑戦 1台で20基地局制御、夜間はGPUをAI計算に転用へ

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サーバー
1台の高性能GPUが入ったサーバーで、20本の携帯電話アンテナの制御を行う。リソースが空いているときは汎用GPUと同様にAIの処理に使える(筆者撮影)

通信品質については、実証実験で100台の端末による同時通信を行い、CPUとGPUの使用率を詳細計測して携帯電話網に必要な安定性(キャリアグレード)が確保できると確認した。基地局制御に通常のクラウドサーバーにはない一定以上の性能と安定性が求められるが、新技術でこれを満たしたということだ。

複数の基地局を1台のサーバーで制御することで、効率化も実現している。現状では1基地局あたり25ワットの消費電力だが、制御する基地局数を40に増やせば半分以下まで低減しできるという。低消費電力なArm社のCPUを採用したことも電力効率の改善につながった。

資料
複数の基地局アンテナを1台のRAN装置で管理することで、省電力化が可能という(筆者撮影)

ソフトバンクはこの技術を「AITRAS(アイトラス)」として製品化し、10年以上前から通信業界で提唱されてきたMEC(モバイル・エッジ・コンピューティング)の実用化技術として位置付ける。

MECは携帯電話網内で近接でデータ処理する手法で、クラウド送信不要のため低遅延サービスを実現する。

AIリソースを最適配分する「オーケストレーター」

AITRASの中核を担うのが「オーケストレーター」と呼ぶ制御ソフトウェアだ。全国の基地局設備を一元管理し、通信需要とAI処理需要に合わせてGPU用途を最適に振り分ける。従来、通信用とAI用で別々に必要だった設備を統合することで、設備投資の効率化が図れる。

このシステムにより、2種類のAI活用が可能になる。1つは通信事業者自身によるAIの活用、もう1つは外部企業へのAIリソースの提供だ。

山科瞬室長
ソフトバンク 先端技術研究所 先端無線統括部 基盤&AI室の山科瞬室長(筆者撮影)

通信事業者自らのAI活用例としてソフトバンクは2つの実証実験を行った。

1つは自動運転の支援システムだ。AI-RANのサーバーに日本の交通知識を学習した「交通理解マルチモーダルAI」を実装し、自動運転車のカメラ映像をリアルタイムで分析し、交通状況とリスクを判断する。

資料
自動運転車の状況判断をLLMがサポートするシステムを開発した。低遅延性が活きるケースだ(筆者撮影)
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