基地局を「AIの頭脳」へ変えるソフトバンクの挑戦 1台で20基地局制御、夜間はGPUをAI計算に転用へ

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今後の課題として、RANモードとGPUモードの高速化があげられる。現状、GPUの用途切り替えには約10分必要だ。「人流データなどを活用した需要予測で、切り替えのタイミングを最適化していく。将来的には数秒単位での切り替えを目指す」(山科氏)という。交通量予測のように通信需要を事前に予測することで、効率的な切り替えが可能になるという。

エリアによってはAI-RANの威力を発揮できない可能性もある。歌舞伎町のような24時間トラフィックの多いエリアでは、常時RANの制御用にGPUを確保する可能性があるという。

また、高性能なGPUを使用するため、サーバーの冷却も重要な技術課題だ。現状の空冷システムから水冷への移行も検討している。

グローバル展開を見据えた標準化

ソフトバンクはAI-RANの国際展開も構想している。

2025年から他の通信事業者向けリファレンスキット(参照実装)の提供を開始し、AI-RANの技術を世界の通信事業者に展開することで、モバイルネットワーク上でのAI処理を標準的な仕組みとして確立することを目指す。

慶応義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC)でAI-RANの実証実験を行っている(筆者撮影)
キャンパスの屋上に20基の基地局アンテナを集中して配置し、電波干渉を避けながら通信する技術の研究も行っている(筆者撮影)

富士通とはアメリカ・テキサス州ダラスに検証ラボを設立し、グローバル展開に向けた準備を進める。また、Red Hat社とも提携し、複数の基地局設備を効率的に管理するための技術開発を行うなど、実用化に向けた体制を整えている。Red Hatが得意とするクラウド基盤技術を活用し、多数の基地局設備を効率的に管理する仕組みを構築する。

「これまでMECは技術的な可能性は示されていたものの、実用化には至っていなかった。AIと通信の融合により、ついに実用的な形で実現できる」と山科氏は指摘する。

基地局をAI処理の基盤として活用する試みは、通信インフラの新たな可能性を示すものと言える。

石井 徹 モバイル・ITライター

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いしい とおる / Toru Ishii

1990年生まれ。神奈川県出身。専修大学法学部卒業。携帯電話専門媒体で記者としてのキャリアをスタート。フリーランス転身後、スマートフォン、AI、自動運転など最新テクノロジーの動向を幅広く取材している。Xアカウント:@ishiit_aroka

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