すれ違う「80代の親」と「50代の子」お互いの言い分 いつの間にか形勢が逆転しているのは当たり前

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スカーフやアクセサリーなども溜まっているのですが、スカーフを取り出して、「そういえばこれは、必死に働いてお金を貯めて、連れ合いとイタリアにオペラを見に行った時に買ったんだった」などと思い出がよみがえってきます。ヨタヘロになって、外出することが少なくなると、こういったイメージで遊ぶのも楽しみになります。

モノは思い出の扉を開くカギだから、「下手に捨てたら、ボケるかもしれない」と言って説得しましょう。脳医学者の瀧靖之先生によれば、脳には「主観的幸福感」が大切だそうです。ですから思い出遊びで幸せな気持ちになるのは、実によいことなのです。

家族など身近な人は親がボケることに潜在的な恐怖があるので、これは効きますよ。

他の人には、価値がないと思われるモノでも、当人にとっては、価値があると思っているモノもあります。むやみな「断捨離反対!」。

一昔前なら「孝行息子さん」とは思いますが…

80歳になりました。連れ合いが入院後のリハビリ中に、私が脳梗塞を起こし、1人では起居ができなくなりました。このままでは夫婦共倒れという状況を見かねて、50代の1人息子が、会社を辞めて介護に専念しようかと言ってくれています。

とてもありがたいのですが、私たちもいずれはいなくなります。その後、息子がどうするかが心配でなりません。実際の問題として、息子の収入がなくなれば、生活は私たちの年金でやりくりするしかないですし……。

一昔前でしたら、「なんて親孝行な息子さんでしょう」といわれたのではないでしょうか。でも、介護のために仕事を辞めてはいけません。

介護離職はここ数年の大問題になっています。小池百合子東京都知事は「7つのゼロ」を公約に掲げ、「介護離職ゼロ」もその1つでしたが、達成されていないと話題になっています。

私は2017年に『その介護離職、おまちなさい』(潮出版社)という本を書き、警鐘を鳴らしました。この本では、〈トモニ介護〉〈ながら介護〉というテーマを挙げ、企業も社会も〈ともに〉介護を支え、介護する人は、働き〈ながら〉介護が十分に可能な社会を目指しましょう、という提案をしました。

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