「恋仲」なぜ最悪のスタートから持ち直せたか フジテレビが採った「ゆるさ」と「引き算」

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ただ不運だったのは、あかりというキャラクターもまた引き算の発想で描かれていたこと。「2人のイケメンから愛される」という図式は、昨年ヒットし、福士蒼汰も出演した『きょうは会社休みます。』(日本テレビ系)と同じですが、綾瀬はるかが演じた花笑は悩みや笑いなどの共感できる部分を持ち合わせていた一方、『恋仲』のあかりは、どん底時代などの苦労がほとんど描かれず、「ただただモテるかわいい子」の印象にとどまっていたのです。

あかりは最後まで「愛情を与えられる」側であり、「愛情を与える」側にはなりませんでしたが、これもラブストーリーの王道。スパッと潔く決断できるのはお仕事ドラマのヒロインで、ラブストーリーのヒロインは「なかなか選べない」と迷わなければ成立しにくいのです。

「ドラマ性よりも視聴率」の最終策

最後に、どうしても触れておきたいのは、最終回をめぐるさまざまな仕掛け。「結末を変えた」という扇動的なコメント、生放送パートの導入、ツイッターの連動企画、「リアルタイムで見て」のあからさまなリクエスト、AKB48指原莉乃の緊急投入など、あからさまな視聴率アップ狙いの策は、ある程度の数字を稼いだ一方で、一部視聴者からの嫌悪感を招きました。

その理由は、これらの策がドラマ性を放棄するようなものであり、視聴者を「醒めさせる」ものだから。「結果を残そう」とする若い制作陣の必死さは理解できますが、なぜここまでの多くの策が必要だったのでしょうか? もちろん視聴率は欲しいとして、それ以外の側面として考えられるのは、超ソフトランディングの脚本。最終回は「どちらを選ぶか?」以外のドラマ性がまったくない筋書きだっただけに、視聴者を引きつけるための策が必要だったのかもしれません。

若いスタッフが、若いキャストを使って、若い視聴者を狙った『恋仲』。ネットでの仕掛けこそ若い視聴者向けでしたが、ドラマ内の胸キュンシーンは「憧れる」と「ありえない」の賛否両論でした。むしろ、懐かしさやリアルさを感じるものとして支持していたのは、30~40代。改めて若年層マーケティングの難しさを実感するとともに、1990年代のような「全世代が見るラブストーリー」の登場を期待したいものです。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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