「恋仲」なぜ最悪のスタートから持ち直せたか

フジテレビが採った「ゆるさ」と「引き算」

これほどのゆるい内容で一定の成果を収められたのは、質はさておき、企画の勝利と言えるでしょう。テーマのぼやけた作品も多い中、ゆるいラブストーリーに徹した藤野良太プロデューサーの目利きの賜物ではないかと感じました(ただ、ゆるい作品が続くと、すぐに飽きられてしまうので要注意ですが)。

現代人に合わせた引き算の発想

『恋仲』が最悪のスタートから持ちこたえたもうひとつの理由は、「引き算の発想」にありそうです。三角関係における「取った」「取られた」などの劇的なシーンはなく、脇役の恋愛模様もほとんど描かれず、あるのはすれ違いと胸キュンシーンだけ。そんな展開に、肩すかしの印象を受けた人も多かったのではないでしょうか。

かつての月9は、脇役も必ずといっていいほど誰かに恋をしていましたが、『恋仲』はほぼなし。山本美月、新川優愛、大原櫻子ら旬の若手女優を生かし切れなかったのは残念ですが、「現代視聴者はせっかちでわかりやすさ重視だから、三角関係のワンテーマに絞ろう」という意図は伝わってきました。

このような引き算の発想は、勧善懲悪のワンテーマに絞った『花咲舞が黙ってない』(日本テレビ系)や『ドクターX~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日系)など、近年のヒット作によく見られる傾向です。その意味ではトレンドをとらえているといえますが、ラブストーリーをここまでシンプルにすると、どうしても時間稼ぎが必要になり、ハッピーエンドに至るまでのすれ違いが不自然なものになってしまいます。

実際、仕事をサボるほど落ち込む葵(福士蒼汰)、受け身で流されるばかりのあかり(本田翼)、ウソを重ねて執着したあげく距離を取る蒼井(野村修平)――。3人が本音で向き合えば話が一気に進んでしまうため、それぞれ悶々としているシーンが続き、視聴者の「共感したい」「応援したい」という気持ちを削いでいました。結果として、キャラの魅力を下げることになっていただけに、今後月9のラブストーリーはどのように構成するべきなのか? このあたりがポイントになるでしょう。

月9ヒロインに求められるもの

逆に、2ケタ視聴率をキープしながら、右肩上がりにならなかった理由として、「本田翼の演技が厳しい」という声も目立ちました。しかし、1980年代から今日に至るまで、月9ラブストーリーのヒロインは演技力よりも、前述した“名前の記号的な人気”があるかどうかを優先してきました。

かつては、月9最多ヒロインの中山美穂を筆頭に小泉今日子、菊池桃子らアイドルばかりであり、21世紀に入っても演技力より人気重視の若手女優がほとんどでした。その点、本田は“名前の記号的な人気”という意味で十分に月9ヒロインを務め上げた気がします。

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