国立大病院「235億円の赤字」が意味する"危うさ" 診療が若手の研究時間奪い「論文の質の低下」も

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⼤⿃病院⻑は、「国立大学病院として、医療の高度化に対応していかなくてはならない状況が、医療費率の上昇につながり、利益率の低下を招いている」と指摘する。

具体的には、相次ぐ高額薬剤の登場などが医療費を増加させ、経営を圧迫しているという。「このことは、ほとんどの人に理解していただけない。すべてが健康保険と患者負担分でまかなわれているものという誤解がある」と嘆く。

大鳥病院長(写真:筆者撮影)

これはどういうことだろうか。⼤⿃病院⻑は次のように説明する。

「例えば、ロボット手術の技術料は健康保険で戻ってくるが、手術に必要な設備費、消耗品などは病院の持ち出しになっている。それ以上に深刻なのは、国立大学法人として利益も追求しなくてはいけないため、手術数を増やし、より多くの患者を診療しなくてはいけない状況になっている。それが診療時間の増加、ひいては人件費の増加につながっている」

「ほとんど引用されない論文」が5割

大鳥病院長を憂鬱にしているのは、経営悪化だけでない。診療時間の増加が、回りまわって若手医師の研究に充てる時間を奪っていることだ。

全国医学部長病院長会議が4月に実施した「大学病院の医師の働き方改革に関するアンケート調査」によると、臨床研究の主体となる中堅から若手医師の5割以上が、週平均の研究時間(同月)は0~5時間だった。研究時間が0時間の20代医師が8割を超えるなど、若手医師の研究時間の少なさが浮き彫りになった。

ところで、国の科学研究力を見るとき、質的観点としてほかの論文からの引用回数の多い論文数を表す「Top10%補正論文数」を用いるのが一般的だ。

下のグラフは、文部科学省科学技術・学術政策研究所(NISTEP)の「科学研究のベンチマーキング2023」から引用したものだが、20年前に比べ、臨床研究における補正論文数のランキングは低下している。

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