国立大病院「235億円の赤字」が意味する"危うさ" 診療が若手の研究時間奪い「論文の質の低下」も

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同じくNISTEPの「科学研究のベンチマーキング2023」によると、2020年の日本の論文のうち、被引用数が0~3回にとどまっている論文、つまり、ほかの論文からほとんど引用されない論文が48.7%となり、ほぼ半分であることがわかった。この水準は中国の38.4%、イギリスの34.2%などを大きく上回っている。

論文の数は減り、しかもその半分はほかの論文に引用されないということだ。これについて大鳥病院長は、「極端な言い方をすると、日本の論文は誰からも注目されていない」と、辛辣だ。

ただ、科学研究のベンチマーキング2023の結果だけで、現場の医師を責めることはできないともいう。

「今の医療現場は研究に専念できない状況にある。先のアンケート結果で、研究時間週5時間の医師が全体の半分だったというのは、週5日勤務だとして1日1時間となる。そんな時間しかなければ、資料を読み込むだけで終わってしまう。そうした環境の中で、論文の質を求めるのは酷な話だ」と語る。

民間病院も他人事ではない

民間病院も含めた状況はどうだろうか。

日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会(病院3団体)が集計した「病院経営定期調査」によると、2024年はさらに厳しい経営を強いられていることがわかる。

調査対象の967病院のうち、経常利益が赤字だった割合は2022年度の23.0%から、2023年度の53.4%へと、30.4ポイント上昇した。コロナ関連の補助金を除くと、経常利益が赤字の割合は65.3%(前年度62.9%)に拡大している。

島弘志副会長(写真:日本病院会提供)

日本病院会副会長で「病院団体合同調査ワーキンググループ」の委員長を務める島弘志氏(福岡県の社会医療法人天神会古賀病院グループ総病院長)は、「2024年度診療報酬改定で入院基本料の算定ルールがより厳しくなり、収入が減っているだけでなく、コロナ後に期待していた入院患者数が回復していない」と話す。

島氏はまた「今年度の収益はさらに厳しくなることが予想され、病院経営の大きな転換点を迎えている」としたうえで、「民間病院は赤字が許されない。今のままでは地域で医療を提供し続けることも危うい」と言う。

病院経営定期調査では、過去6年間の毎年6月の延べ患者数を比較している。同調査によると、コロナ前にあたる2019年6月を100%にすると、入院の延べ患者数は翌年に87.7%に落ち込んだ。その後は回復基調をたどっているものの、2024年も93.0%にとどまっている。

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