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三菱自動車が「10年ぶり」の米国生産回帰、利益依存深まる北米にトランプ関税直撃、柱のASEAN苦戦で提携戦略に活路

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三菱自動車は日産自動車とのSUV共同生産という形で、10年ぶりにアメリカでの新車生産に復帰する意向だ(写真:鈴木紳平)

10年ぶりの方針転換だ。

三菱自動車工業はアメリカで日産自動車の工場を活用してSUV(スポーツ用多目的車)を生産する。「互いにとってウィンウィンになると思っている」。5月8日の決算発表の場で三菱自の加藤隆雄社長はそう語った。

三菱自は2015年まで、アメリカのイリノイ州の工場で完成車を生産していたが、赤字を垂れ流していたため2015年に撤退。その後は旗艦車種のSUV「アウトランダー」などを中心に、アメリカで販売する車は全てアメリカ国外から輸入していた。

三菱自は2023年3月に発表した中期経営計画で、ASEANやオセアニア、中東といった自社のブランド力が強い地域に経営資源を集中する方針を掲げていた。当時、アメリカを含む北米市場は日本やヨーロッパと並んで優先度が最も低い地域に設定していたが、ここにきて方針を転換する。

全社利益の5割以上を北米で稼ぐ

背景の1つに北米市場の重要性の高まりがある。

2025年3月期(2024年4月~2025年3月)の北米での販売台数は18.6万台で前期比14.1%増、2023年3月期からは4割増と、大きく伸ばしている。北米の販売台数は三菱自全体の84.2万台のうち2割強を占めており、25万台を販売した東南アジアに次ぐ規模となった。

しかも、北米事業の営業利益は769億円。前期比では7割減益となったものの、全社営業利益の55%を占める。今や北米が三菱自の稼ぎ頭、屋台骨であると言っても過言ではない。

そんな最重要市場を襲ったのがトランプ関税だ。4月3日にアメリカへの輸入車に対して一律25%の追加関税をかける措置を発動した。アメリカに生産拠点を持たない三菱自にとっては大きな痛手となる。

2年前の中計からはうれしい誤算でアメリカが伸びた。結果、「切ろうと思っても切れない市場になった」(三菱自幹部)ことが今回の決定を後押ししたとみられる。

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