足立と葛飾の複雑な「区境」で味わう静かな"興奮" 「境界協会」主宰・小林さんの"推し境界"を巡る

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ちなみに、両区のガードパイプはよく見るとデザインが違う。葛飾区のほうは荒川、中川、江戸川という区内を流れる大きな3本の川をイメージしたデザイン、足立区は区の花であるサクラをイメージしたデザインだ。これぞまさに「境界」の醍醐味。「こういうのを見つけると興奮する」という小林さんの気持ちがよくわかった。

隣り合うガードパイプの間に区境があるため、デザインが異なる。写真上が足立区、写真下が葛飾区のガードパイプ(撮影:今井康一)

区が変われば舗装も変わる

綾瀬駅付近を抜け、今度はマンガ『こちら葛飾区亀有公園前派出所(こち亀)』で知られる葛飾区亀有方面に向かった。古隅田川はこの亀有付近にも流れていたといい、今も暗渠に近いような、川だった名残がある地点が随所に見られる。

かつて川は亀有中通り商店街の入り口付近を通っていて、両区の境界線はやはり古隅田川に沿っている。ここにも境界を示すわかりやすい「証拠」があり、両区の境目付近で道路の舗装や住居表示が異なっていた。

管轄の区よって道路の舗装にも境界が。こうした境界の証しを見つけると嬉しくなるという小林さん(撮影:今井康一)

僕らが境界を熱心に見ているのが気になったのか、長年この地に住む高齢男性が声をかけてきた。

「昔はここに川があって、洪水が多かったんだよ。だから、この辺の家は少し土台を高くして造っているの」

つまり、洪水や増水が多い土地だったため、戦後に治水対策として川の流れを変えたのである。「境界のことを調べているとその土地の歴史や成り立ちもわかるんです。それが面白い」と小林さんは満足げだ。

ツアー中に住民の方に話しかけられる小林さん(撮影:今井康一)
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