足立と葛飾の複雑な「区境」で味わう静かな"興奮" 「境界協会」主宰・小林さんの"推し境界"を巡る
小菅駅に現れた小林さんはまず「境界協会」と書かれた派手な黄色のビブスを身につけた。ツアーへの期待感が一気に高まった瞬間だ。

小林さんは手始めに「この小菅駅からして面白いんです」と言った。「小菅」という地名は葛飾区にあるが、小菅駅自体は足立区にある。同駅の前の道がまさに足立区と葛飾区の境界線にあたる。
駅名にある地名と所在自治体が異なるのは品川駅(所在地は東京都港区)など僕でもいくつか知ってはいたものの、いきなりの「境界」の洗礼に興奮を覚えた。
足立⇔葛飾の区境が複雑な理由
まず案内してもらったのが、小菅駅から数分歩いたところにある荒川の河川敷だった。
聞くと、河川敷には先ほどの小菅駅前からつながる、足立区と葛飾区の境界線があるという。すると、早速河川敷で「葛飾区占用境界線」「足立占用地境界線」という表示が目に入った。2つの表示は河川敷を縦断する道を挟んで両端にあり、河川敷を斜めに横切って荒川の「中」にまで境界線が及んでいる。

なぜこんな複雑な境界線になっているのだろうか。その答えは近くを流れる「古隅田川」だ。古隅田川はかつて今の荒川付近まで川が流れており、古隅田川に沿う形で足立区と葛飾区の境界ができていた。
しかし、治水工事によって古隅田川はせき止められ、両区の境界線だけがそのまま残ったというわけだ。「古隅田川の延長線上が、先ほどの荒川河川敷の境界線にあたるのです」。

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