「陰謀論」にハマる人が後を絶たない根本原因 フェイクニュースとの違いは何なのか
左派・リベラルや反米志向でも陰謀論に陥る人はいる。例えば日米地位協定の運用について日米実務家トップが協議をする日米合同委員会についての議論だ。
日米合同委員会の参加者はごく少数の「政府高官」のみであり、協議の中身は原則非公開。あるジャーナリストは同委員会について「外務省の密室で」「人知れず協議を重ね」「アメリカ軍の特権を維持するために数知れぬ秘密の合意=密約を生み出している」と指摘している。こうした「秘密裏の政治的合意」といった触れ込みは陰謀論を生み出す格好の材料になりうるので、取扱注意のワードだ。
結論を言えば、日米合同委員会には日米間の新たな合意を決定する権限はないことが通説である。にもかかわらず「密室」「特権」「秘密の合意」といったワードによって、一般人には決して触れることができない秘密の集団のたくらみにより政治的、社会的決定がなされているような印象を与えている。
乖離を埋めるためのストーリー
Q 陰謀論はどういうとき、どういう経緯で生まれますか。
大統領選挙に敗北したトランプが「不正選挙」と主張したり、自民党に選挙で勝てない左派・リベラル勢力が、自民党はさまざまな団体や組織の傀儡(かいらい)になっていると語ったりする事例からもわかるように、陰謀論は目の前で起きている現実を是認できないときに生まれやすい。「あるべき現実」との乖離が大きいとき、その乖離を埋めるためのストーリーとして陰謀論が生まれ、支持を得ていく。
陰謀論は演繹法的な考え方で組み立てられる。自分の考えに沿う沿わないにかかわらず、一つひとつの事実を積み上げることで真相に迫っていく帰納法に対し、陰謀論は望ましい結論が先にあり、その結論に合うような理屈だけを抜き出して組み上げる。
「安倍元首相は闇の組織に暗殺された」という結論が最初にあり、ここに向かって「警備が不自然に薄かった」「銃創の位置に不審な点がある」「手製の銃で人を撃てるわけがない」といった、答えに合う理屈だけが組み上げられ、そうでない証拠や論理については「当局は事実を隠蔽している」と考えて、陰謀論思考はどんどん加速していく。