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三洋化成社長「おむつ原料事業の撤退は正しかった」 構造改革、シルクエラスチン、日本触媒との統合…

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京都の中堅化学メーカー、三洋化成工業が売上高の2割を占める主力事業からの撤退を決断した。その背景や新規事業の手応え、PBR向上策、さらには業界再編の展望について樋口章憲社長に聞いた。

樋口 章憲(ひぐち・あきのり)/三洋化成工業 社長。1959年11月7日生まれ。三重県出身。東京理科大学大学院工学研究科卒。1984年4月、当社入社。石油・環境本部長や副社長経営戦略部門担当を経て2021年6月から現職(撮影:ヒラオカスタジオ)

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日本経済を活性化させるための起爆剤として「中堅企業」への関心が高まっている。本特集では、誰もが知る有名企業から意外なニッチトップ企業まで日本各地で飛躍している中堅企業の現状や、彼らを取り巻く環境の変化、注目企業ランキングなどをお届けする。

※有料会員限定のインタビュー記事です。三洋化成工業の解説記事はこちら

ファーストペンギンであることが非常に重要

――「ここが他社とは違う」という三洋化成の強みを教えてください。

界面制御技術を生かし、ニッチ(隙間)領域でシェアが高く収益性も高い製品を手がけていることだ。

界面とは「空気と物」など、異なる物質の境界面のこと。その界面の性質、例えばポリ袋の表面の性質を変えて価値を高めるのが界面制御技術だ。自動車用エンジン油の粘度指数向上剤や、航空機などに使われる炭素繊維の集束剤など、身の回りのさまざまなところで当社の製品が使われている。

――ニッチ領域を狙う企業は多いです。その中で高いシェアを築くポイントは何でしょうか。

「匂いセンサー」は、三洋化成工業が得意とする界面制御技術を生かして開発した。食品業界の品質管理や小売業のモニタリングなどに活用できる (撮影:ヒラオカスタジオ)

誰かがすでにやっていることは誰でもできる。(新しい分野に率先して挑戦する)ファーストペンギンであることが非常に重要だ。多様な匂いを可視化する匂いセンサーは他社も取り組んでいるが、実装できたところはほとんどない。紙おむつに使われる高吸水性樹脂(SAP)も世界で初めて商業生産した。

また、自動車や航空機など向けの製品は、いちど顧客が採用すると安全性の観点から簡単には切り替えない。われわれはそうした参入障壁の高いカテゴリーに入り込むことが多い。

――新規事業として開発に注力する人工タンパク質の「シルクエラスチン」は、2031年3月期の営業利益60億円を目標にしています(前期の会社全体の営業利益は49億円)。

日本初の「遺伝子組み換え技術を用いた医療機器」として承認を目指している。主な用途は、糖尿病などによる創傷(皮膚の損傷)の治癒とひざ半月板の再生で、医薬品とは異なり副作用がほとんどない。いずれも治験で高い効果が確認されており、開発は非常に順調だ。

――一方、3月に撤退を発表したSAPは、前2024年3月期の売上高の2割を占める主力事業ですが、中国メーカーとの低価格競争により収益性が悪化していました。なぜ高付加価値化できなかったのでしょうか。

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