フジ「新人アナいじり」が許せないという人の盲点 被害者と加害者は誰か、本質が見落とされている

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筆者は長年、悩み相談のコンサルをしてきましたが、その2010年代前半あたりからネガティブな感情を蓄積させる人が明らかに増えました。中でも、自分の人生に直接関係のない人々への批判は、心の中に攻撃性や後ろめたさなどを蓄積させる最たるもの。

「こういうことを書いたらこれくらい傷つける」とある程度わかっていながら無関係の人を叩くのですから、自らの残酷さを自らの心に刻みつけているようなものなのでしょう。

「いつか自分も叩かれるかもしれない」という怖さを抱えて生きることにもなりますし、あおるメディアとそれに乗る人々の共犯関係に流され、自分の感情や人生を乱されているとしたら何とももったいない話です。

【画像】いじめに見える? フジ新人・上垣アナに対する「“いじり”の場面」

報われづらい「男性アナ」の実情

最後に挙げておきたいのは、男性アナウンサーをめぐる現実。女性アナウンサーの話題は多く、PVが稼げるネタとして定着していますが、男性アナウンサーはそうとはいえません。

番組でもメインは女性アナウンサーになりがちで、男性アナウンサーがフィーチャーされるのはミスやスキャンダルなどのネガティブな話題が多く、技術やプレッシャーの割に報われづらい立場という感は否めないところがあります。

これまで各局の男性アナウンサーたちと接する機会が何度もありましたが、彼らは総じてマジメで謙虚。現場では同じ局員から使われる側の立場になり、忠実かつ確実に任務をこなさなければいけません。同期や後輩が各部署で出世していく中、プライドという点も含めて、「ミスはできない」という意識は男性アナウンサーのほうが強く感じられます。

だからなのか男性アナウンサーには「テレビ番組の出演者」という華やかなイメージはなく、彼ら自身「自分はスタッフの1人」と語る人が少なくないのです。

上垣アナが類いまれな才能の持ち主であることは間違いなさそうですが、それでもこれから徐々に男性アナウンサーならではの難しさを感じていくのでしょう。

私たちはSNSに感情的な言葉を書き込むのではなく、その姿をテレビ越しに見守るくらいの穏やかなスタンスでとどめておきたいところです。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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