最高哲学責任者(CPO)で会社はどう変わるか? エシックス(倫理)と資本主義を考える(4)

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

ガブリエル:もちろんです。なぜなら、生活の質の向上を説明できるからです。ブータンの国民総幸福量指数をはじめとして、多くの経済学者が、さまざまな指標をいかに運用するか、質の高い指標にするかについて取り組んでいます。

そうした考えを経済にまで広げていくと、新たなアカウンティング人材が生まれ、新しい活動が始まるかもしれません。

「見立て」――日本再生の道は温故知新にある

名和:日本では何か新しいことを始めるよりも、ドイツ、アメリカ、イギリスなど海外に目を向けて競い合い、自ら新しいシステムを考え出そうとしない傾向があります。これは日本を再生させるときにはいい方法なのでしょうか。

ガブリエル:最近、茶道で「見立て」という素晴らしい言葉を知りました。

名和:禅の奥義に日常における「今、ここ(而今)」の大切さを知るように、あるものを別のものとして見て、その趣向を楽しむのが「見立て」ですよね。

ガブリエル:そうです。真似して対処するのとは違う、素晴らしい融合方法です。ハイデルベルクの有名な哲学者であるハンス=ゲオルク・ガーダマーは「地平融合」という素晴らしい概念を提唱しています。ある時代の文化が1つの地平であり、他にも地平がある。それらを融合させると、これまで見えなかった新しいビジョンが見えてくるというのです。

「見立て」もそういうもので、日本の近代化のサクセスストーリーをつねに担ってきたと思うのです。日本は他のアジア諸国のように侵略や植民地化されることなく、独自に近代化を果たしました。

日本の近代化は、私の友人の多くが思っているほど外的なものではありません。そうせざるをえなかったから近代化したのではなく、改革者たちは未来を見据えて、16、17世紀に、そして、明治維新後には、明らかに何かしないといけないと感じていた。

次ページ日本の美意識を学ぶ茶道の名著
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事