最高哲学責任者(CPO)で会社はどう変わるか? エシックス(倫理)と資本主義を考える(4)

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そういう未来志向が日本の力となってきました。単に未来ばかりを見るのではなく、現実的な運動に変える力があるところが日本の強さなのです。

茶道の美意識が道しるべに

名和:そうおっしゃっていただけると嬉しいですね。しかし、日本人はあまり茶道をたしなみません。岡倉天心に『茶の本』という名著がありますが、これは英語で読んだほうがいいですね。もともと英語で書かれた本ですから。

ガブリエル:それは知りませんでした。私も茶会に出るために1冊入手しましたが、素晴らしい本ですね。

名和:薄い本ですが、奥深いですよね。私たちはそこに書かれたような精神を持っているのに、いつの間にか忘れてしまっている。日本人として日本文化を学び直さなければなりません。そのためにも、外から刺激を受けるのはいいことです。

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ガブリエル:私が茶道から学んだことの1つは「湯気」です。湯気のはかない形は安定した水から生まれると考える。不安定と安定の関係も日本の美意識ですよね。こうした美学もまた、真実への道しるべです。それを経済活動に反映させれば、日本にとって大きな優位性となります。

名和:ガブリエルさんは、日本人よりもずっと日本のことをご存じですね。日本の考え方を世界に広めるためにも、アンバサダー的な存在になって、日本とドイツとの架け橋になっていただきたいですね。

ガブリエル:ぜひそうしたいと思います。現代のドイツは日本から学べることはたくさんあります。私たちは経済の現実という同じ場所で一緒に踊っているのに、お互いに十分な会話を交わしていません。もっと相互に影響し合わなくてはなりませんね。

名和:本当にそうですね。刺激的なお話をしていただき、ありがとうございました。

(翻訳・構成:渡部典子)

マルクス・ガブリエル 哲学者、ボン大学教授

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Markus Gabriel

1980年生まれ。ボン大学、ハイデルベルク大学などで学び、史上最年少の29歳でボン大学の哲学科正教授に就任。同大学国際哲学センター長も務める。西洋哲学の伝統に根ざしつつ、「新実在論」を提唱して世界的に注目される。著書に『なぜ世界は存在しないのか』『「私」は脳ではない』(ともに講談社)、『新実存主義』(岩波新書)などがある。

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名和 高司 京都先端科学大学ビジネススクール教授、一橋ビジネススクール客員教授

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なわ・たかし / Takashi Nawa

1980年東京大学法学部卒業、三菱商事入社。90年ハーバード・ビジネススクールにてMBA取得(ベーカー・スカラー)。その後、約20年間、マッキンゼーのディレクターとしてコンサルティングに従事。10年より一橋大学教授。22年より現職。ボストン コンサルティング グループ、アクセンチュアのシニアアドバイザー、ファーストリテイリング、デンソー、味の素などの社外取締役を歴任。現在、SOMPOホールディングスの社外取締役、朝日新聞社の社外監査役など。著書に『パーパス経営』(東洋経済新報社)、『超進化経営』(日本経済新聞出版社)、『問題解決と価値創造の全技法』(ディスカヴァー21)などがある。

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