最高哲学責任者(CPO)で会社はどう変わるか? エシックス(倫理)と資本主義を考える(4)

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そこで何が起こったかというと、私たちはまずウイルスと闘い、次にウイルスを私たちの生命体に統合することで、共存することを学んだのです。免疫とは他の自然と共存する方法であり、人間の身体は非常に複雑な免疫システムを持っています。

経済も同じように考えたいと思っています。免疫学に代表される生命科学の最先端の概念を経済の議論に持ち込むのです。

名和:ところで、ガブリエルさんのような哲学者や社会学者は希少な存在です。企業が社内に哲学者やCPOを置くには、どうしたらいいのでしょうか。外部の専門家が何社か掛け持ちする形になるのか、それとも各社がCPOの役割を内製化すべきでしょうか。

CPOとBS/PL

ガブリエル:まずは試行段階を踏むことです。哲学者を取締役に迎え、経験を積んでもらいます。

次の段階として、これを資本主義のエンジンに変えるためには、おそらくビジネスコンサルティング事業部をつくり、収益向上を目標にメンバーには給与や研究費を支払います。要するに、研究開発部門のようなものをつくって倫理資本主義をよりよいものにしていくのです。

マルクス・ガブリエル
マルクス・ガブリエル 1980年生まれ。ボン大学、ハイデルベルク大学などで学び、史上最年少の29歳でボン大学の哲学科正教授に就任。同大学国際哲学センター長も務める。西洋哲学の伝統に根ざしつつ、「新実在論」を提唱して世界的に注目される(撮影:今井康一)

これは一足飛びには実現しません。私が提案したいのは、最先端の哲学を取締役会レベルに持ち込むところから始めて、そのうえで経験を積み、自社のビジネスに移転させることです。

ビジネスコンサルティングを事業部化するのは、企業はBS(貸借対照表)の数字をつくらないといけないからです。完全に経済的手段に転換させなければなりません。そうやって私たちの実践を明確化し、学んだことを実践に還元していくのです。

名和:今日のBSやPL(損益計算書)は、過去と現在を映し出したものにすぎません。未来を見据えて先鋭的で新しいものを考えるために、アカウンティングの人たちは、もっと創造的な発想をしたほうがよろしいのでしょうか。

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