科学が証明「寝不足だと風邪をひきやすい」は真実 アメリカ発・興味深い睡眠研究の結果2つを紹介

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人間がウイルス感染すると、睡眠はどうなるかの話です。風邪をひいたときの経験を思い出しながら、読んでみてください。

先に、ウイルス入りの点鼻薬をつけさせた実験を紹介し、睡眠時間が短い人ほど風邪にかかりやすいことを紹介しました。この実験と似ていますが、人間に風邪ウイルスをわざと感染させて睡眠を調べた、これまた危なっかしい研究があります。

風邪をひくと睡眠の質はどうなる?

アメリカ、デトロイトのヘンリー・フォード病院で行われた実験では、ライノウイルス23型を人にわざと感染させて、風邪症状が起きていたときの睡眠を睡眠ポリグラフで記録しました。

結果として、風邪で伏せっているときは、総睡眠時間が短くなり、睡眠効率〔註9〕が悪くなるなど、睡眠の悪化が見られました9

風邪をひくとだるくなって眠くなり、体を横にするには都合の良い状態にはなりますが、元気なときのような満足度の高い睡眠はとれなくなるようです。

たしかに、風邪をひいたときは眠くはなりますが、途中で何度も目が覚めるなど、健康なときのようなぐっすりと、疲れがとれるような睡眠ではありません。

おそらく、発熱や痛みなどで睡眠が妨害され中途覚醒が多いことが原因として考えられます。何より、深夜の睡眠中は低い値であるはずの深部体温が、発熱によって高い温度で維持されてしまうことは、睡眠にとってはマイナス要因です。

眠っている間に体の中で何が起こっているのか
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人間の場合は、軽い風邪など炎症反応が比較的軽度のときは、わたしたちが休息できてかつ細胞が修復できるようノンレム睡眠が増加します。また、発熱を促進し免疫反応を高めるために、体温を下げるレム睡眠が抑制されます10

免疫がちゃんとはたらくように、睡眠も調節されるわけです。

ただし、感染症が重症化してしまい、体の消耗が激しい場合には、ノンレム睡眠もレム睡眠も減少します。痛みや発熱だけでなく、さまざまな異常によって、ぐっすり眠るどころではなくなってしまうのでしょう。

たとえば細菌が全身に回って、免疫でも手に負えず非常に危険な状態になる敗血症では、高熱による意識混濁、呼吸困難なども生じます。こんな状態では、ぐっすり快眠どころではないことは、推察できます。

[註9]睡眠効率とは、ベッドの中にいる時間と実際に眠っている時間の比率をいう。たとえば8時間ベッドの中にいたとしても、正味6時間しか寝ていなかったとすれば、睡眠効率は「6÷8×100=75%」となる。もちろん、睡眠効率は100%に近いほど望ましい。

④Everson, C. A., & Toth, L. A. (2000). Systemic bacterial invasion induced by sleep deprivation. Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol, 278(4), R905-916. https://doi.org/10.1152/ajpregu.2000.278.4.R905
⑸ Prather, A. A., Janicki-Deverts, D., Hall, M. H., & Cohen, S. (2015). Behaviorally Assessed Sleep and Susceptibility to the Common Cold. Sleep, 38(9), 1353-1359. https://doi.org/10.5665/sleep.4968
⑨Drake, C. L., Roehrs, T. A., Royer, H., Koshorek, G., Turner, R. B., & Roth, T. (2000). Effects of an experimentally induced rhinovirus cold on sleep, performance, and daytime alertness. Physiology & Behavior, 71(1), 75-81. https://doi.org/https://doi.org/10.1016/S0031-9384(00)00322-X
⑽Imeri, L., & Opp, M. R. (2009). How (and why) the immune system makes us sleep. Nature Reviews Neuroscience, 10(3), 199-210. https://doi.org/10.1038/nrn2576

西多 昌規 早稲田大学教授 早稲田大学睡眠研究所所長 精神科医

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にしだ まさき / Masaki Nishida

東京医科歯科大学医学部卒業。ハーバード大学客員研究員、東京医科歯科大学大学院助教、自治医科大学講師、スタンフォード大学客員講師などを経て、現職。日本精神神経学会精神科専門医、日本睡眠学会専門医、日本老年精神医学会専門医など。専門は睡眠医学、身体運動とメンタルヘルス、アスリートのメンタルケアなど。著書に、『休む技術』『休む技術2』(大和書房)、『悪夢障害』(幻冬舎新書)、『自分の「異常性」に気づかない人たち』(草思社文庫)などがある。

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