筆者の住む自治体には、日本の公立校の感覚に近い一般的な教育を行う小学校が多い。ただ日本のように「学習指導要領に沿って、どこでも同じ内容の教育を受けられる」わけではない。
市内の隣接する小学校を比べても、使う教科書、音楽や図画工作にあてる時間数、校外活動の有無など、違いは多い。授業時間ですらも、筆者の子どもが通う小学校では下校時間が15時で、水曜は午前授業だけだが、隣の小学校は毎日14時下校だ。
多様性と個性を尊重するオランダ
このように「みんながみんな同じ教育」ではなくても問題がないのは、オランダ社会に根付く多様性や、個性を尊重する考え方が根底にある。みんな違って当たり前、それを1つの型に収めようとするほうが難しいならば、一定の枠組みのなかで自由にしたほうが合理的なのだ。
学校内でも「みんな同じ足並みでやりましょう」という場面は、日本に比べて少ない。
たとえば勉強ができる子は特別クラスや飛び級制度がある。苦手な子は無理に進級させず、もう一度同じ学年を履修する。読み書きが苦手な識字障害の生徒には、特別な体裁の本が使われる。
つまり、無理を強いたりつらい思いをさせたりするよりも、個々に合う方法でステップアップしていくことを重視している。
またマイノリティへの理解も深く、小学生の時点で性自認が異なることを公表している子もいれば、同性愛カップルの両親を持つ子どももいる。移民も多く、肌や髪の色、生活習慣も多様だ。
ラマダン(イスラム教徒の「断食」期間)の時期にはお弁当を持ってこない子もいる。もちろんいじめや差別がまったくないわけではないが、海外から移住してきた子どもも比較的なじみやすい環境だと思う。
「画一で標準的」な日本の教育とずいぶん違う「多様で個性的」なオランダの教育。どちらが良い悪いではなく、それぞれの歴史が育み、社会が望んで形成してきた教育の形だ。
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