この体温調節の機能をつかさどっているのが、自律神経です。漢方の考え方では、自律神経の調整は「気」が行っています。
気は生命エネルギーのようなもので、体の表面をバリアのように覆っています。ところが、何らかの理由で気の巡りが悪くなると、そのほころびから体に悪影響を及ぼす「邪気」が入ってきて、さまざまな不調が生じるとされています。気温差や気圧の変化も邪気の1つということができます。
見方を変えると、同じ環境下でも寒暖差にやられる人と、元気でいられる人がいるのは、この「気」の働きの違い、もっというと自律神経の働きに差があるということなのです。
寒暖差で出やすい不調とは?
今の時期、筆者のもとに相談があった寒暖差不調で多いのは、以下のとおりになります。これらを見ても、自律神経にかかわる症状が多いことがわかります。
特に最近、目立つのは膀胱炎を訴える方の多さです。
膀胱炎とは尿道からばい菌が入り込んで炎症を起こす病気をいいますが、なかには、原因となるばい菌がいない(見つからない)にもかかわらず、排尿時の不快感や頻尿、残尿感、軽い排尿痛、尿が出にくいといった症状が出る人がいます。
この場合、漢方的に考えられるのは「陰虚(いんきょ)」です。
陰虚とは漢方の考え方の1つで、体内に水をため込む力が弱くなり、脱水を起こしやすい状態を指します。例えるなら、雨が降らず乾燥した日が続くと森などで山火事が起こりやすくなっているようなもの。これと同じように、体が陰虚の状態になると炎症が起こりやすくなるのです。
今年の夏は暑く長かったので、例年よりも陰虚の状態に体が傾いていた人が多くおられました。そこへきて、このところの寒暖差。負担がいっきに体にかかったため、炎症が治まらず、悪化していったと思われます。
寒暖差不調を起こしやすい人には、共通の特徴があります。
1つは、最初に挙げた「気が不足し、体表面を覆うバリアが弱くなっている人」、もう1つは次に挙げる「夏の間に陰虚の状態に体が傾いてしまった人」です。
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