「生成AIのせいで理系は終了?」いま必要なスキル 東大・松尾豊研究室出身 若きAI研究者が回答

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━━具体的には?

僕の手元に『Googleのソフトウェアエンジニアリング』(O’Reilly社)という本があります。Googleといえば世界のエンジニアリングの親玉ですから、すごいことが書いてあるはずです。

ところが中身を見ると、純粋なプログラミングのことはほぼ書いていない。むしろ、非常に人間的なことばかり書かれています。

一言で言うなら、コミュ力。人間の心理的なことを考慮してエンジニアリングをしよう、と言っています。こうした本は他にもたくさんありますが、書いてあることは概ね「人間の心理」の話です。

大規模なソフトウエア開発は、基本的にチームでやるものです。これはGoogle以外の企業もそうですし、研究の実装でもそう。そして、チームでやるときにプログラミング能力が問題になることはほぼありません。

大規模な開発は、人間的な能力を駆使した共同作業です。他の人間がどう思うか。ドキュメントは分かりやすいか。こうした人間の心理的なことを考えて、チームとして作業することが求められます。

エンジニアに「コミュ力が重要」などというと反発する人がいますよね。僕も昔はそうでした。ですが、特に今後生成AI時代が発達すると、間違いなく不可欠な能力になると思います。

先ほど紹介したAIエージェント「Devin」にも人間の心理に配慮した作業はできません。ゆえに、中期的に見ても、AIに置き換えられるとは思い難いですね。

「体系的知識」の価値は失われない

━━これほどまでに生成AIが浸透した要因の一つには自然言語を扱えるようになったことも挙げられます。今井さんもXで「AIを使えば大体みんなすごいことができる」と仰っていました。

確かに「プロンプトさえ書ければすごいことができる」とみんなが言っていますし、実際、入力さえすれば、すごいことができます。ですが、自然言語で何かを聞くためには、そもそも自分が何を聞きたいのかを理解していなければなりません。

そのためには前提として、その分野についてある程度体系的な知識を持っている必要があります。それがなければ、自分は何を考えるべきか、何が問題なのか、何を聞くべきかさえ分かりません。

僕は職業エンジニアではないですが、Webサイトを作ることはあります。UIを作ろうと思ったら、ボタンがどうとか、こういうパーツがどうとかを考える必要があります。

ですが、僕にはそのパーツの名前が分からない。分からないのでChatGPTに「こんな感じの」とあいまいに指示をするのですが、全然ダメです。聞けさえすれば解決するのですが、僕には聞けなかった。それは体系的な知識がないからです。

(写真:エンジニアtype編集部)
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