「生成AIのせいで理系は終了?」いま必要なスキル 東大・松尾豊研究室出身 若きAI研究者が回答
━━何がダメだったんですか?
これを読んだら先生に怒られるかもしれないですが、松尾先生の良さは適度な厳しさにあると思っています。適度と言っても、指導されている身としては時に理不尽と思うほどの厳しさなのですが。
おそらく松尾先生は、厳しくしたことに対する反発力まで考慮に入れている。「こういうきつい言い方をしたら、反発して力を発揮するだろう」などというように。ですが、これは生成AIには無理なんです。
無理というのは、技術的に無理ということです。AIを開発する際には、僕の専門分野である強化学習を使って、サービスレベルのモデルの場合には大半の場合、アライメントを行います。
人間の価値観に則って、暴力的な言動を封じ込めようとする。そのプロセスで「反発がどう」というのも意図的に排除されているように見えます。そういうところまで含めた「人間のことを知る」というのは、生成AIでは難しい。
━━けれどもそこに松尾先生、ひいては人間の良さがある、と。
だいたい何カ月も経ってから気づくのですが。最近も3年前に言われたことについて「あれは正しかったな」と思うことがありました。具体的には「今井くんは世界のことが全然分かってない」と飲み会の帰りにぽろっと言われたんです。
僕としては「東大の松尾研に入った人間だ」という自負があったので、当時は反発したのですが。博士課程を終え、いろいろな仕事をするようになった今「正しかったんだな」と気づきました。そういうスパンで、人間の本質を見抜いて、あえて厳しいことを言うというのは、AIにはできないと思います。
理系であれ、文系であれ、そうした「人間の心理」をついた思考や行動ができる人、どんな時代がやってこようと「変わり続ける」覚悟を持った人が活躍できるのではないでしょうか。
文/鈴木陸夫 編集/玉城智子(編集部)
書籍紹介
話題の生成AI、どこまでなにができる?
AIって結局、どんなしくみで動いているの?
最新テクノロジーで私たちの仕事は奪われる?
AIで働き方や生活がどう変わるのか知りたい……
そんな不安や疑問、そして未来への興味関心に応える今井翔太さんの著書『生成AIで世界はこう変わる』(SBクリエイティブ)がベストセラー中!
第1章 「生成AI革命」という歴史の転換点――生成AIは人類の脅威か? 救世主か?
第2章 生成AIの背後にある技術――塗り替わるテクノロジーの現在地とは?
第3章 AIによって消える仕事・残る仕事――生成AIを労働の味方にするには?
第4章 AIが問い直す「創作」の価値――生成AIは創作ツールか? 創作者か?
第5章 生成AIとともに歩む人類の未来――「言語の獲得」以来の革新になるか?
特別対談 松尾豊×今井翔太 生成AI時代に求められるスキルとマインドとは?
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら