TSMC「ピークはまだ」敵失でAI半導体ブーム独走 ASMLショックが映すインテルとサムスンの"今"
10月17日の決算説明会で真っ先にぶつけられた質問も「TSMCとしてAI需要の持続可能性をどう捉えているのか」というものだった。
これについて魏哲家(シーシー・ウェイ)CEOは「AI需要は本物」と強気の姿勢を見せた。さらに「ハイパースケーラーを含め、ほとんどのAI企業と話し合っている。TSMCはこの業界で、誰よりも深く広い見通しを持っている」と続けた。
ウェイCEOはAI需要の見通しに対し、従来はもう少し保守的な見方をしていた節がある。1年前の決算時では「AI需要は伸びているものの、事業全体のシクリカリティ(シリコンサイクル)を相殺するほどではない」とコメントしていた。
対して今回、ピークについて問われた際には「需要はまだ始まったばかり。この先数年は続くだろう」と、かなり強気な見方に変わっている。
これまでAIブームの立役者は、アメリカのGPU(画像処理装置)大手・エヌビディアであり、彼らのニーズに応えることでTSMCは成長を遂げてきた。だがこの1年で、エヌビディアだけでなくハイパースケーラーが独自AIチップを開発する動きが本格化している。
さらにエヌビディアの牙城を崩そうと、ライバルの半導体メーカーであるAMDはじめ、多くがAIチップの開発に本腰を入れ始めた。こうした彼らの需要も取り込んでいることが背景にあるようだ。
TSMC一強が鮮明に
もう一つ、TSMCが強気に傾いた背景には、競争環境の変化も影響している。最先端半導体の製造で競っていたアメリカのインテルや韓国のサムスン電子が最先端品の製造で苦しんでおり、「TSMC一強」体制が築かれつつあるのだ。
そのことを象徴するのが、「ASMLショック」だった。ASMLは、オランダの半導体製造装置メーカー大手。同社が10月15日に発表した決算では、受注額や来年度の業績見通しが市場予想を大幅に下回ったことで株価は急落。これが日本の株式市場にも冷や水を浴びせることになった。
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